研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 080/106page

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関係を,電子の動きとの関連で考えさせる必要があろう。

 【8】は,水溶液を混合して,その中に含まれるイオンを予測する問題である。誤答は,イ Na+,ウ SO42-の組みあわせが多く,正答は約8%と著しく低い。加えたことが確認されているのは硫酸ナトリウムだけであるから,Na+SO42-と答えたものと考えられる。

しかし,一度沈でんが生じたうわずみ液に,さらに硫酸ナトリウムを加えて前と同じ沈でんが生じたということは,最初に加えたSO42-は全部沈でんして水溶液中には存在せず,SO42-と結びついて沈でんを生じる相手のイオンが過じょうに存在することを示している。SO42-と結びついて沈でんを生じるイオンは,Ba2+なので,結局,このうわずみの中にあるイオンは,Ba2と加えたNa+だけが確実に存在するといえる。Ba2+過じょうの水溶液中にSO42-は存在しないし,また,Ba2+と同時に存在している負イオンが,OH-(水酸化バリウムの場合)かC<1-(塩化バリウムの場合)かについてはこの実験のデータからはわからないからである。

ア Ba2+ エ OH-と答えた生徒の中には,データの拡大解釈をしたものが多いと思われる。さて,この問題は,加えた水溶液中に存在するイオンと,白い沈でんを生じたことから相手のイオンを推測し,さらに,うわずみ液に加えて再び同じ沈でんを生じた事実から,うわずみ液中のイオンを推測するという複雑な思考を必要とする。しかし,授業中の実験でも,こうした問題に直面することはあるはずなので,それを意識的にとりあげて指導することによって,イオンのゆくえを追求していくような考え方を養うことができる。

 【9】は,未知イオンを検出して水溶液に含まれ物質を推論するときに,その根拠となった実験をみつけるものである。解答はもちろん,水酸化力ルシウム水溶液中のイオン,Ca2+,OH-を検出する実験を選べばよい。つまり,リトマス紙によってOH-の存在を,炭酸ナトリウムの水溶液によってCa2+の存在を確認しているわけである。

未知イオンの検出は,前問の【8】も同じであるが,実験を個別化して,生徒ひとりひとりに探究させることによって学ばせることが比較的できやすい教材なので,そのような指導を強めるとともに,特にデータから結論を導くときに得られたデータからいえることは何か,また,こういう結論を出すためには,さらにどのような実験を計画し,どんなデータを得ればよいかなどを検討する訓練が必要であろう。

第 1 分 野 (物理的領域)

この領域では,「知識・理解」「実験観察能力」の正答率がそれぞれ48. 9%、52. 1%で,「科学的な思考」の66.7%に比べて低い。これは,実験観察とそれに伴う知識・理解が生徒にじゅうぶん定着されていないためと考えられる。観点別に考察してみると次のようになる。

@ 知識・理解

 この領域では,【13】【15】【17】【19】【20】【24】【25】がこれに該当する。【13】は,仕事に関する最も基本的な事項を問う問題であるが,正答率が27.7%と非常に低い。仕事はいうまでもなく第1分野における重要な概念の一つであるが,抽象度が高く,生徒にとってはかなり理解が困難である。それは,仕事には,温度や電流のように直接測定できる計量器がない。また,力と距離との2つの要素から求めるということが仕事の概念をいっそう困難にしていると思われる。

誤答の例をみると単位をW,g/m g/uと回答している生徒が半数程みうけられるこれは仕事の定義をじゅうぶんに理解されないままに終ってしまった結果と考えられる。仕事の定義を教師が最初に与えるという指導法に問題はないだろうか。すなわち,生徒の思考と無関係に与えた定義は,その後の指導によほどの工夫をしないかぎりじゅうぶんな理解が得られないままになってしまう場合が多い。生徒の実態に即した指導が望まれる。

具体的な仕事の概念の導入のしかたでは,生徒に日常使っている仕事の具体例をあげさせ,食物,石油,電力など何かを消費しなければそれが続けられないものを選び出す。このような種類の仕事の代表例として,【13】の問題のように物体を鉛直方向に引き上げるときの仕事をとりあげ,物体の重さが重く,引き上げる距離が長いほど仕事が大きくなることを観察させ,次にこれを一般化して(力の大きさ×力の方向に動いた距離)として,仕事の大きさを測る尺度にするというような,生徒自らが発見するいわゆる操作的定


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