研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 083/106page
に多いこと,は事実であり,水面に集まる性質は推論であることが区別できるかどうかをみたものである。この問題に対して11.7%と低い正答率を示したことは,事実と推論の混同があることであり,観察の指導にあたっては,一つ一つの観察事項について事実かどうかをたしかめてゆく,きめのこまかさが必要になってくる。
【8】【9】は,ダイズの根に光をあてたときの根の反応の実験について,根に影響をあたえる条件と,対照実験の条件設定にっいての出題である。【8】では,ダイズの根を下に向けた理由を問うのであるが,誤答を調べてみると,植物にはたらきかける条件として,重力の条件を抜かして解答している生徒が多かった。植物の成長に関して,重力は大きな影響をあたえるのであるが,はたらきかける条件として気がつきにくいことも事実である。実験を行う場合の条件設定については,一つ一つの条件について吟味していく指導が大切である。【9】は対照実験であるので,この条件以外はすべて同じにしなければならないのであるが,条件を二つ変えた装置を選択したものもかなりあり,対照実験についての条件吟味も不充分であるといえる。対照実験については,生徒に実験の計画をさせ,条件の吟味をさせるなどの指導が効果的である。
B 科学的思考力
【7】は,前述したミドリムシの走性について,実験結果から結論が得られないことを思考させる問題である。ここでの出題の意図は,実験結果を方法と対比して総合的に判断する力をみるところにある。正答率が46.4%と低いことは,一つの実験結果からだけ結論を導き出し,他の結果と比較してみる力が不足しているためと考えられる。実験の結果から結論が出せないということを判断することもきわめて重要なことである。
【10】は,動物の運動をモデルを通して、思考する問題である。モデルとしてミミズの縦走筋と環状筋の動きを示したが,それぞれの動物の動きと対比できなかったように思われる。動物の動きなどについても,このようなモデルで考えさせることは指導上必要であろう。
【14】は,野草方形区の中で背の低いオオバコが背の高い植物の中に入って生育がさまたげられることを思考させる問題である。ここでは,7月のヒメムカシヨモギ,イヌビエの高さと9月の高さの変化から,オオバコの生活環境を読みとるものであるが,66.0%と正答率もよく,データの解釈の力がそなわっていると判断できる。
【16】は,一定面積にまいた種子の密度と成長量の関係を,一定面積にあたる光の量から考えさせる問題である。この問題も前問同様,実験データーを読みとり,そのデータを解釈して解答するものであるが,データ量がすくないこともあり,一定面積にあたる光の量が変わらないため一個体あたりの光合成量が小さくなることの関係がよくとらえられている。
第 2 分 野 (地学領域)
第3学年で学習する地学的領域の大部分は,地史の領域である。この領域の指導は地層および岩石の一般的な観察の方法について学習することにはじまり,発展して地球上に生命が誕生してからの歩んできた道すじを学ぼうとするところに内容的なねらいがある。
しかし,前述の目的を達成するためには,野外に実際に出てデータを集め,そこから出発しなければならないという時間的な問題がある。そのため,ややもするとおろそかにとりあつかわれる場合も考えられる。
しかしながら,生命の誕生が地球を含む大自然の中から生じて進化してきたという事実から考えれば当然自然の観察が理科学習においては重視されねばならない。
本問題は,基本的な岩石の観察と地震をテーマにしたデータの処理を中心として出題してあるが,特に岩石の形成過程にづいて動的ないしは成因論的立場での考察をさせるための指導に欠ける面があるようである。
また,データ処理についてはかなり訓練されているようではあるが,まだまだ定着されていないようである。
@ 知識・理解
この領域では【20】【22】が該当するが,鉱物の特徴から鉱物を識別するための基礎知識は身についているように思われる。(【22】場合)。しかしながら【20】の小問では火山岩の重要な組織の特徴である石基の名称が出てこないのが残念である。(正答率32.7%)この石基のもつ意味はいうまでも