研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 084/106page
なく火山岩と深成岩を成因的に識別する重要な鍵である。つまり,火成岩の形成過程,周囲の環境条件を読みとれるポイントでもある。
探究すること,直接教えるべきことがらを充分考慮し,教えようとするものは徹底的に訓練して知識として身につけておくべきで,その基盤に立って探究が可能になることはいうまでもない。
A 観察・実験の能力
これに該当するのは【18】【23】【25】であるが,【18】【25】については予想以上の正答率を得ている。グラフをみて両者の関係をつかむための指導はかなり効果をあげている。
しかしながら,少しほりさげて考察させると,その正確性という点ではかならずしも問題がないわけでもない。
その例が【23】である。すなわち,グラフを書き,そこから測定しなかった値を読みとる能力ということになると,まだ訓練指導が必要になると思われる。
しかしながら,この点の指導が完全にゆきとどいたならば,まさに探究の方法が修得されたといえるだけに,すべての生徒に要求することは困難であるかもしれない
B 科学的な思考
この観点に該当する小問は【19】【21】【24】であるが,地震計に記録された資料とグラフを対比しながら思考する内容を問うた【24】は60.3%の正答率を示している。この点に関しては大変よく指導されており,現代科学の指導方法として好ましい方向に向っていることを示している。
次に【19】,【21】についてであるが,いずれも予想より極めて誤りが多い。特に【21】にいたっては正答率11.0%となっている。
この問題は,
T図(左に掲載)のCの鉱物はセキエイである。この岩石中のセキエイは,普通結晶の形がきまっていない。その理由を簡単に書きなさい。
である。この問題を解かせるための指導のポイントとして二つあげることができる。
すなわち第一に記述形式の問題であることである。一般に現在の中学生においては『自からの考えを要領よくまとめて,必要最少限に言葉で表現する』ことにきわめて弱いということがいわれているが,それが表われているのである。
この点については,今後の指導(すべての教科でじゅうぶん考慮しなければならないが)で検討してゆかねばなるまい。第二に,岩石や植物を観察する場合,単に記載のみで終ってしまうためではないだろうか。本来観察の結果をもとに,どうしてそのような組織からきたのか,その形成の機構をじゅうぶんに考察させる必要があると考える。
その結果,前述にあげたセキエイの結晶が深成岩中では自形を示さないこと(セキエイは最後に結晶するため)が考えつくのだろう。
いずれにしても岩石を見る場合に,それぞれの観察の観点を,岩石の形成過程をふまえておさえていける能力が必要であり,それが科学的思考へと発展するのである。
地学領域においては,特に野外にその学習対象を求めるために,ややもすると黒板やOHPなどの資料を与え,単なる知識のみが定着してしまって,創造性が生まれてこない場合が多いようである。
今回の調査においても,そのような傾向があらわれているのが残念である。