研究紀要第25号 学習指導に関する研究 - 027/060page

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増殖と食物の量との関係を調べる実験は,生息密度の実験に比較すると,生徒の既有経験から予想を立てさせることも可能であり,現象を理解させることも容易である。食物が自然界における動物の増減を支配する要因として,重要な位置を占めることを理解させるという点で,取り上げてみたい実験である。

なお,この実験を実施するときの予想される問題は,コーンミールを主としたベイトをつくることにあると思われる。これは,前述した生息密度に関する実験についても共通することである。しかし,このベイトは,バナナで代用することも考えられる。バナナの場合は,重さの測定がベイトより簡単であること,えさの表面を広げるときに斜めに切れることなど,コーンミールを主としたベイトより操作の点で利点が多い。

この実験では,バナナを用いたデータは出していないが,小学校4年のショウジョウバエの飼育では,かなり多くの羽化数を得ているため,バナナを用いてもデータは充分得られると思う。また温度についても,5月中旬以後であれば,時間は多少かかるが,室温で飼育が可能である。

 

5.おわりに

生物と環境のような生態に関する教材では,どのような実験観察を取り上げても,ひとつのデータを出すまでには多くの期間を必要とする。このショウジョウバエの増殖の実験も例外ではなく,約20日間の日数が必要である。しかし,実際に実験として手を触れるのは,えさを管びんに入れるとき,成虫を管びんに入れるときと逃がすとき,羽化した成虫の数を数えるときであり,期間は20日間でも,時間的には大きな負担にはならないと思われる。また,飼育については,小学校4年での経験があり,発展的な取り扱いとして既有の経験を生かすことができよう。データも個体数として出るため定量化して処理するのに好都合である。

はじめに少し触れたが,ここに示したデータをドライ・ラボとして取り上げてみるのも良い方法である。

ショウジョウバエに関しては,日週期活動や,年週期活動などについても,環境要因との関係を教材化することができよう。今後,ドライ・ラボとして取り上げる上での研究を試みてみたい。

 ◆参考文献

  野村健一 … 昆虫学入門(北隆館)
  生島功他 … 生態学実習書(朝倉書店)
  駒井卓  … ショウジョウバエの遺伝と実験(培風館)
  篠原正文 … 新しい生物実験(共立出版)
  文部省  … 中学校理科指導書

(担当者 深沢一栄)     


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