研究紀要第25号 学習指導に関する研究 - 029/060page
電流と磁界に関する教材研究
−コイルの作る磁界について−
はじめに
コイルの作る磁界の強さを調べるときの条件はいろいろあるが,電流の大小,まき数,まき線の太さについては問題なく実験がうまくいくようである。しかし,コイルの長さや直径が変化すると問題がでてくる。たとえば,コイルの直径が大きくなると,直感的には,磁界の強さは小さくなるように思われるが,中学校の教科書にあるような方法で実験してみると大きくなる。
そこで,コイルの長さと直径が変化することによって,磁界の強さは,どうなるかを理論的に解明し,実験値と比較して検討を加えていきたいと思う。
1.コイルの中央部での磁界の強さ
長いコイルの作る磁界の強さH は,コイルの直径の大小に関係なく単位長あたりのまき数n とコイルに流れる電流I の積nI に比例する
しかし(1)式が成立するためには,コイルの長さが“十分に長い”場合という条件がついている。
それでは実際に実験するとき,どの程度の長さであれば“十分に長い”といえるのかを考えてみる。半径α,単位長あたりのまき数n のコイルに,電流を流すと中心軸上の磁界の強さH は一般に,図-1より(2)式で与えられる。
コイルの中央部すなわち中心軸の中点の磁界の強さH 。は図-1に於てcos α =−cos β となるから(3)式のようになる。
そこで,cos α がコイルの長さによってどう変るかを調べるため図-2。より(4)式を求めた
これをR =5,10,15oの場合について,コイル長l の変化によって(単位長あたりのまき数は一定)H 。がどのように変るかを示したのが,グラフ−1である。