研究紀要第25号 学習指導に関する研究 - 040/060page
(その2)
金属材料結晶組織の変形観察はじめに
金属加工では主として板材や棒材で構成する金属製品を設計させ,その製作を通して,塑性加工ならびに切削加工の特徴を理解させ,使用目的や使用条件に即して製作品をまとめる能力を養い伸ばすことを目標としている。
特に材料の指導に対しては羅列的に金属材料の特徴を説明するに終ることなく,第1学年では金属の塑性変形を知らせ,構造の強さを増す方法を考えさせたり,使用目的から材料に要求される性質を理解させるようにつとめ,第2学年では炭素鋼.合金鋼などの工具材料,炭素鋼,黄銅などの加工材料を切削加工の作業を通してそのしくみや性質を理解させたり,炭素鋼の熱処理の方法によって性質が異なることを確認させ,目常生活と金属加工技術とが結びつくよう指導することになっているが,中学校では設備や備品が不足しておりこれらの指導は容易でないようである。
塑性変形や切削,熱処理などによって生ずる諸性質は結晶粒の変化によるものが大である。
そこでこれらの結晶粒の変形した幾つかを示し指導上参考になればと思い試みたものである。1.金属板の折り曲げ
図−1のように折り曲げた板金の各部の写真であるが,(1)と(2)とは内側の結晶組織が押しつぶされておることがわかる。(3)は外側の部分であるが結晶粒は不鮮明ではあるが引伸ばされていることが大体観察できる。
2.炭素鋼の引張り