研究紀要第25号 学習指導に関する研究 - 054/060page
これらの表を概観してみて,いずれも曲線が一見右さがりの傾向を示しているようにみえる。可視的にとらえられるこの傾きは,女子教員による担任年数が長期にわたればわたる程,女子教員によって教えをうけた児童の算数能力が下降していくことを示唆するものと解されよう。
しかし,それはあくまでもこれらの曲線を目でとらえ,直感的に解釈を加えた場合であって,この解釈が正当なものであるか否かは,数理統計的な手法による検定をおこなわなければならない。したがって,これらの解釈の妥当性の検定のために,分散分析法による検定をおこなった。下記の表Uの1〜表Uの3は,それらの検定の計算結果である。(教育センターのコンピューター処理による。)
この分析の結果,これらの得点分布には有意の差がまったくといっていいほど認められず,女子教員の教育は児童の算数能力に有意の差をもたらしはしない―すなわち,女子教員に算数を習うと学力が低下するという仮説は棄却された。
表Uの1 (表Tの1の検定)
平方和 自由度 不偏
分散 分散比 備考 水 準 0,533 1,000 0,533有意水準
5%で
有意差なし 誤 差 56,937 14,000 4,067 0,131 全 体 57,470 15,000表Uの2 (表Tの2の検定)
平方和 自由度 不偏
分散 分散比 備考 水 準 0,368 1,000 0,368有意水準
5%で
有意差なし 誤 差 46,411 10,000 4,641 0,079 全 体 46,779 11,000表Uの3 (表Tの3の検定)
平方和 自由度 不偏
分散 分散比 備考 水 準 0,168 1,000 0,168有意水準
5%で
有意差なし 誤 差 9,576 2,000 4,788 0,035 全 体 9,745 3,000なお,上記の検証結果は,あくまでも小学校児童を対象にしたデータをもとに検出したものであり,学年が進み,中,高と対象の年齢が高く,思春期までにわたった場合にはこの結果と異なるものが検証されるかもしれない。
しかし,あえてそれを含めて推論を加えれば,「小学校段階では教える教師の性差よりも個人差が児童の算数の能力により大きな影響をあたえ,中学入学以降になってはじめて教えられる生徒の性差が前者をより大きく凌駕する」ものと結論づけられよう。この点については,さらに今後の追試をこころみたい。
2.男女教員の性差と児童・生徒の性格・学力に関する調査について
表Vの1は,男女教員を対象におこなった教師の性差と児童,生徒の性格,学力に関する調査のまとめである。
この表から読みとれることは,@ 女子教員に比して男子教員に"教師の性差が児童,生徒の性格形成や学力向上に大きな影響をあたえることが強い"と回答したものが圧倒的的に多いこと。A 女子教員は,男女教師の性差よりは教師の個人差が児童,生徒にいろいろな影響をあたえると認識している率が高いこと。B 男子教員の回答では,「大きい影響を与える」「多少影響を与える」「性差よりは個人差が強い」と,大きく群が3つに分かれ,女子教員のそれは「個人差が強い」「あたえない」の2群に分かれているのが目立った。このことは,男女教師の他の性の教