研究紀要27号 児童・生徒の学習能力の発達 - 001/082page
1.概 要
学習能力が研究テーマとして取り上げられたころ2つの点が留意されたようである。1つは,ぺーパーテストを特に意識しないで子どもの授業そのものを展開してみることであり,2つは,単なるスキルのオンリーでなく,子どもの考え方にじかに接してみるということであった。
前者は,テストそのものは重要であるにしても,教師がテストすることに心を奪われて,子どもサイドで授業を展開しにくいことを考慮したものであり,後者は,スキルそのものが一つの能力であるとしても,この研究においては,もっと子どもの思考と判断を伴った学習能力の形成を望んでいたためである。
この予想を裏づけるかのように,授業者は学習能力という意識で,何かしら負担を感じていたようである。すなわち,日常の授業とその方法や展開のし方が多少のニアンスを異にしていたためと思われると同時に今後にも課題の多いことを示しているようだ。
(1) プランニングの力を練る
一般に教師は,指導計画の立案に弱くなっていると言われ,特に学習者に即応するプランニングの経験に乏しい。子どもの姿をよく見,それに対応する計画が良く立てられる場合は,学習指導も円滑に行われるケースが多い。
最近,教師をめぐる学習指導の環境は豊かすぎるきらいがある。計画は,既成のものができており,板書事項まで一応の設定がされている。これは,ある意味で教師の指導する体質を弱めてはいないだろうか。(2) 教師の指導姿勢を考える
教師の指導姿勢は,多くの条件の複合されたものである。これは,長い伝統的なものもあり一概に論ずることはできないようである。しかしながら,指導するということが教師サイドに傾斜しすぎて,指導を受ける子どもサイドの立場が意識的に考えられることが少ないきらいがあった。教師は,この学習指導における考え方を転換するとともに,学習中における子どもの実態をよく観察して,個別的なつまづきに対して援助や助言を適切にし,子どもをよりよく伸ばす方途を考える必要があると思われる。
(3) 子どもの学習姿勢を考える
子どもの学習態度は,教師の指導姿勢に影響されるところが大きい。教師は指導上の低抗をできるだけ少なくし,子どももまた,受身の姿勢で指導をうけることに馴らされてきた。これでは,子どもは依然として受容的な態度の連続であり,潜在する能力が伸び悩みすぐれた能力も未開発に終ることさえあり得るであろう。
教師は,もっと子どもの個性的な思考をのばすようなムードづくりを考えるべきであり,子どももまた,自分をのばす心構えを失うことなく,積極的に学習に参加し,のびのびと学習活動に参加すべきであろう。
以上のようなことがらをふまえて第2年次は下記のようなねらいをかかげて取り組んだ。2.ね ら い
(1) 学習の前提となる能力を把握する
学習能力は,子どもが一つの課題に直面した
図(1)学習課題の解決
○学習は,課題解決のリズムである。
○一時間の目標達成にも,解決しなけれぱならない課題がいくつかある。
○しかも目標達成度は,子どもによってさまざまである。