研究紀要27号 児童・生徒の学習能力の発達 - 002/082page
時,既有の学習経験による知識・能力が新しい課題の解決に有力に働く力である。一時間の学習に例をとれば,図(1)のとおりである。
この研究推進のために,全教連では学習能力を便宜的に,A能力とB能力に分けたが,私どもの考え方については,昨年の紀要でのべたところである。
A能力―
当面の学習において伸ばしたい能力で実際に働く能力である。
B能力― 子どもが学習をするに当たって,先行経験によってえられた能力である。 B能力は,前提となる能力と考えられるが,レデネスとは一応区別している。すなわち,レデネスは,知識面を中心に考えるが,前提能力では子どもの考え方,学習目標に対する知識内容以外の思考の傾向,パターンを含めてゴールに達するための前提となるもので個人差を含むものとしている。
したがって,授業の展開もこのような前提となる能力を把握するための諸調査や検査などを適宜行うべきである。(2) 学習の習得過程を大事にする
教師は,授業においてより滑らかな展開を予想するあまり,一人一人の子どもの実態を見落しがちである。多くの場合,教師の指導性に押されて子どもの考えや発言が低迷し,また切り捨てられたりする傾向があるが,実はこれらのなかに大事な要素が潜在するケースも多い。
教師は,学習指導において,子どもの習得するプロセスを重くみて,授業の外観や結果だけに心を奪われることのないようにすると共に,常に子どもの実態に対応できる幅をもつように心掛けたいものである。学習指導が平板に流れるのは,教師の教材研究の深浅によるものなのか。それとも,教師の臨機応変の処理の不手ぎわによるものだろうか。子どもの発言や質問などの反応をより効果的に発展させる手法やタイミングに乏しいきらいがある。授業に臨むにあたり,教師はいく筋かの学習コースを予想して展開させたいものである。図(2)参照。
図(2) 授業の流れの予想
子どもの思考は,単一でなく,多くの分野と関連するつまずきが予想される。 教師は,これを計画した方向のみ強引に指導しない。
教師は,この実態を正しくとらえる眼が大切である。
教師は,子どもの立場をふまえ,これを正しく誘導すべきである。
教師は,子どもの結論が常に一つにまとめられると,思ってはならない。(3) 学習上における子どものつまずき
「つまずき」や「ゆき詰まり」は,教師や子どもの両方に起る。教師の場合は,教材研究やその編成の手順・方法や指導方法,子どもの取扱い方などが,子どもにつまずきを起させる要因となるようである。
子どものつまずきについて,日俣周二先生は次のように要約している。@経験的・初歩的なもの A基礎的な概念把握に関するもの B原因の把握と応用に関するもの C用語的なものとしている。おそらく子どものつまずきは,この4種類に入ることであろう。
教師は子どもが,学習過程において,どんなところに困難や停滞を感じているかをとらえてその傾向を大事にし,それを克服する経験を通しながら,子どもの学習能力を見なおしていく契機としたいものである。
学習におけるつまずきや行き詰りは,決して多いことのみを歓迎するものではない。しかしながら,つまずきに対する教師の対処のし方が,子どもの学習姿勢に大きな影響を与えるばかり