研究紀要27号 児童・生徒の学習能力の発達 - 036/082page

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算数科における筋道たてて考える能力の発達と授業に関する研究

 

1.研究のねらい

 小学校学習指導要領には算数科として次のような総括的な目標がかかげられている。「日常の事象を数理的にとらえ,すじ道を立てて考え,統合的,発展的に考察したり,処理したりする能力と態度を育てる」。これに対応して中学校,高等学校の数学教育の総括的な目標は,それぞれ次のようである。「事象を数理的にとらえ,論理的に考え,統合的,発展的に考察し,処理する能力と態度を育成する」「事象を数学的にとらえ,論理的に考え,統合的,発展的に考察し,処理する能力と態度を育成し,また,社会において数学の果す役割について認識させる」。

 ここからわかるように,算数,数学教育に対する指導要領の立場は,表現上,少しの差異はみられるが,小学校から高等学校に至るまで,まったく同じ思想でもってつらぬかれている。すなわち「数学的な考えや態度を育成する」という大目標の中に,すじ道をたてて考える能力や態度の育成をめざしているものである。

 そこで,この研究では,すじ道たてて考えることが,算数を学習していく上で,一つの重要な能力となっていることを確認し,学習目標を達成する過程で,具体的な児童の反応をとらえながらしすじ道たてて考える能力の形成過程を明らかに,ていくものである。

 この研究を進めるにあたって,すじ道たてて考える能力を次のように解釈した。つまり,すでにわかっている原理や法則をもとにして,考えをすすめ,新しいものをみつける力,例えば3年の乗法筆算形式ができるようになるためには,その前提となる交換法則,結合法則,十進位どり記数法,乗法九九,加法筆算形式などの原理を生かして,2位数×1位数の計算方法が分配法則をもとにして成り立つことをわかった上で,一般化された筆算形式をつくりあげていくような力のことである。

 これについては,子どもにも,研究のねらいをつかませておくことが大切であるとの認識から,子どもには「わかっていることをもとに,自分で考えていく力」という理解をさせた。

 ここで具体的に子どもが筋道たてて考えていくためには,どのような指導の過程を組むべきかを考えたとき,第1段階として問題をとらえる,次に予想を立ててしらべる,第3段階で解決する。第4段階でたしかめる,最後にまとめる,という5段階の指導過程を取り上げることにした。

 

2.対象

 算数科における筋道を立てて考える能力の発達をテーマとして,小学校3年の児童の授業を研究の対象にした。この学校は,東北本線国鉄松川駅よりバス川俣線で15分,さらに徒歩で10分の位置にあり,絹と農業の飯野町の一角にある明治小学校である。小規模校であり学級の児童数20名で個別指導の行き届いた学級である。
 取り扱った単元は,小数のかけ算であり,小数の整数を乗じる演算方式を理解させる内容である。

◎この期の子どもに演算方式を理解させるには,方法を単にマスターさせるよりも,授業過程において,子どもの発想や思考のプロセスを大事にするとともに,子どもながらに演算の方式を見つけ出すような指導をすることが長い眼で見れば,子どもの算数における能力の開発に役立つものであると考える。

◎演算の方式などは一方的に教えこむのは簡単であり,結果だけを早く知ることに意をもらし,途中のプロセスを重視することのない児童にはわたりに舟でもあるが,まず1人で考えさせ,自分としてのやり方をもたせることに重点をおいている。全児童に自分としてのやり方をもたせるときは,


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