研究紀要27号 児童・生徒の学習能力の発達 - 062/082page
目標を作成し,教材・資料,学習活動教師の協力分担,評価の観点を明確にすることである。特に目標の分析を行う過程では,教師が単独ではとうてい無理で,必ず数人の支えが必要である。
しかし,いかに明確な目標の分析と指導の手だてを整えても,教師と児童の人間関係を考慮しなければいかなる能力の育成も不可能に近いことを知らされた。教師はとかく能力の高い子に目を奪われがちであるが,能力がいかに低い子でも,学習に参加している以上,少しでもわかりたいと考えない子はいないはずである。能力の低い子は,どんなところに「わかる喜び」を感じるかをは握しておくことが,最も大切なことであることも知らされた。ここには,どのようにしてわからせるか,また,どうかして児童の学習態度を変えてやろうとする教師の心が,子どもに理解されていなければならない。また,おちこぽれなくどの子も本当にわかった状態にまでもっていくためには,児童自身が主体的に学習にとりくむ方法を構じなければならない。
児童にことばで「わかった」といわせることは容易であるが,児童のわかったということはどんな状態なのが,はっきりしておくとともに,わかりたいという気持を持続させて,自分の納得のいく考えをもとに新しい考え方にむかって追求していく場をつくっていかなければならない。
とにかく,考えていく基になる小さな原理をひとつひとつ発見させていく授業の流れをくふうし,考えていくことをめんどうがらない子を育てていくよう心がけるべきである。
(エ) 今後の問題点
○ 児童の思考を豊かにするための問題文の吟味およぴその観点を明らかにすること。
○ 児童の思考と指導内容の結びつきを考えた指導過程の研究をさらに進めること。
○ 考えを進める場合,個々の発想,タイプは異っている。これらをいかにすじ道たてていくか研究をすること。
○ 児童のつまずきをもとにした思考のさせ方などである。学習能力の形成には,学習上におけるかなりの抵抗が予想される。その抵抗をしっかりみとどけることおよびその取り扱いがこれからの教師としての重要な分野の仕事となるであろう。