研究紀要27号 児童・生徒の学習能力の発達 - 061/082page
省であるが,すじ道たてた考え方を育てたいと考えて指導した場合に,すじ道たてて考えているのは教師だけではないかと感じることがある。児童は,ただ,そこに共通な意味や形式があることを説明され,認めるに終って,自分から筋道たてて考えたりしていないのではないだろうか。大切なことは,児童が何をきっかけに,その見方や,すじ道たてた考え方に,気づいていくかということであり,そのきっかけにもとづいて,思いきった試みを行い成功する。その感動とか驚きが,考え方を育てる大きな糧になると思われる。
◎育てる能力の明確化
子どもの能力には知的なものをみても,感覚,知覚,記憶,思考,創造性などがある。さらに情意的なものや運動,技能的なものがある。これらの能力を基礎にして,生みだされたものが学習能力である。具体的には,授業によってつちかわれた能力であるということができる。例えば「経験したことや,情報の意味を知る」とか「比較して相違を知る」などの能力である。従来から,理解・態度・技能という表し方をしているのは,学習能力を領域的に分類したものと考えるべきである。
私たちは,学習目標を設定する場合,「○○を理解させる」とか「○○する態度を養う」というようなきわめて一般的な表現が多く,具体的にはどのような能力を育てようとしているのか,明確さを欠く傾向があった。そこで能力を具体化していくためにシカゴ大学教授B.S.Bloom目標分類体系を活用することになる。◎能力の形成訓練
算数科で育てられる能力には,いろいろあるが第一には思考力であると考えられる。思考についてはくわしく分析してみる必要があると思うが,他の教科でも問題解決学習として思考過程を重視している。いろいろな面から考えてみると,「算数のよくできる子は,他の問題解決(それが日常の生活場面でも)の場に直面したときに,考え方の分析的,総合的な方法が一般にすぐれている」といわれているようなこともあるのではないだろうか。問題を分析し,再び総合する能力は算数において養われるケースが多い。「考える」ためには,まず,ひとりひとりで考え自分のやり方をもつことが大切である。新しい考え方を理解できるのも,その自分の考えたことを出発点にして,はじめての可能である自分のやり方をもつためには,じっくり考える時間が必要である。しかし,いかに時間が必要であるとはいえ,単純な問題を15分も20分も,ただゆっくり考えろといっても,児童はただぽんやり過してしまう。一般には,かなり優秀な子どもでもとっさに思いついた答に満足し,さらに高次な考えを深めようとすることは,まず考えられない。
そこで,自分なりの考えをはっきりもたせるために,自分の考えたことをノートさせるようにした。書きながら考えると新しいことに気がついたり,すでにわかっていたつもりのものが,あいまいであったためにわからなくなったりする。また,自分の考えに自信をもつことができるという利点もある。
◎むすび
総括的に考察してみるならば,学習ユニットによって,目標の分析がきわめて重要である。これは学習内容の要素と下位の学習能力を結ぴつけ,行動