研究紀要27号 児童・生徒の学習能力の発達 - 078/082page
(6) 指導の反省
@ 資料活用能力について
社会科における基礎的能力として,観察力,資料活用力,思考力の三つが考えられ,その育成が重要である。
ともすれば,毎日の社会科学習指導の場面で,上記の三つの基礎的能力が,それぞれ別個のものとしてとらえられ,本時は観察力の育成,次時は資料活用力の育成というように1時間1能力の育成といったとらえ方ではない。
これら三つの能力は,どれか一つに重点をおいて育成させるということはあっても,本来は,相互に関連をもって高められていかなければならないものである。上記の三つの能力は,社会生活を正しく理解していくために必要な能力であって,この能力を育成する根拠は,正しい社会的判断力の基礎を養うことにある。そこでこれら三つの能力は個々バラバラに並列してあるのではなく,関連的に位置づくものであるから,ひとつの能力だけが高められただけでは社会生活を正しく理解したり,正しい社会的判断力の基礎を養うことはできない。
A 資料活用能力の要素となる能力
○ 収集する能カ……身近な材料のなかから,学習に活用できそうな資料を集めることができる力。
○ 選択する能カ……集めた資料のなかから,学習問題解決に役立つと思われる資料を選択できる力。
○ 読解する能カ……学習問題解決に必要な資料を読みとり,資料からいえる事実を正しくとらえることができる力。
○ 解決する能力……資料からいえる事実のみを読みとるだけではなく,事実の背後にあるものを理解できる力。
○ 捨象する能カ……資料から学習問題にあわせて不必要な部分を捨象できる力。
○ 評価する能力……自分で収集し,活用した資料を一定の基準に合わせて自分でよい面,悪い面などを評価できる力。これらの力を育てるために授業で留意した点は,
○ 児童が進んで発表できるように児童の経験や考え方に対応した発問をくふうした。
○ ひとりひとりの児童の発言が全体の児童に大切にされるような学習のふんいきづくりに心がけた。
○ 児童の,思考が混乱した時や停滞した時は現場学習をしたり,資料を提示したりした。そこで,「調査1」について,考えてみると,「郵便」と言われたときに,書き出せることばが,事前→見学→授業という三つの段階を経て,高まっていることは,「見学」「授業」の効果が上ったものと解釈される。
それにつれて,「はがき,切手,小包……」と,事物名しかあげられなかったものが,「行きさきごとにわける集配係のおじさん,郵便をはこぶ,消し印を押す仕事」などと,事象と事象の結ぴつきをあらわすことが多く上げられるようになったことからも,うかがえる。B 学習ノートの活用について
児童ひとりひとりが,授業の中で,どう