研究紀要27号 児童・生徒の学習能力の発達 - 079/082page

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考え,どう反応しようとしているかをとらえるために,わたしたちは,「発問に対する反応をみる」というかたちで行うことが多い。これは,その時の児童の反応をすぐにとらえて,全員の賛同を得たり,反応者自身の考えの発想転換をしてやったりするのに,非常に大切なことは言うまでもない。

 しかし,短い時間にその反応をとらえようとすればするほど限界を感じ,学級の一部の児童の強い反応で,授業が進められてしまう傾向もみられる。

 また,発表力のおう盛な児童に目をうばわれ,ともすると,中位以下の児童は黙ったままでいることが多い。
 そこで,その反応を少しでも多くとらえられるようにノートを活用することを取り入れた。自分の考えを先ずノートしてみる。これを基盤にしてさらに考えをしぼり自分のものとしていく経験を積ませることによって,学習がさらに深化されて学習そのものへの子どもの参加を積極的にすることが可能となるだろう。

C 教育機器(0・H・P)の活用について

 児童は,自分の書いた文や絵が,教材あるいは,まとめ・練習として,授業の中でとり上げられることに大へん興味を示すようである。
 そこで,授業の中で,トラペンアップ等の方法によって,すぐにTPシートに転写して使用する方法もとり入れた。これも授業の中で,すぐに活用できるようにすると,効果は上るようである。
 例えば,「郵便の経路に関する調査」の場合,OHPを利することによって集団思考の場に焦点を合わせ,共通理解を得るのに有効な手段と考えられる。

D 資料提示による反応について

 「調査2」を実施してみると,上位の児童は反応が速く,反応数も多いという特徴がみられた。それに比して,下位の児童は反応が単発で,1つ反応すればそれでおわり連鎖的な反応が少ないようである。
 こうしてみると,資料活用能力を育成するためには,できるだけ速く反応させ,事実に即して推測していくような活動を通して常に訓練することが重要なことである。

 

4.考 察

 自分で出した郵便が,そのまま相手に届き,差出人と受取人との心の交流がはかれることは,その年齢相応に好奇心にかられるに違いない。このような経験のある子どもにとっては,なおさらその内容について知りたいと思うことだろう。子どもの学習能力の養われる素地も実はここにあるのである。それは,一つの事実に対して強い関心を寄せ,これらの社会機能ならびにその機能を推進する人々の働きに少しでも眼を向けて認識を新たにし,より高い理解を得ようとする子どもの前むきの姿勢が大切である。

 言うなれば,この子どもの事実認識を深めようとして指導する教師の指導性にあることは言うまでもないのである。このような立場から若干の考察を加えたい。

(1) 郵便が確実に届く仕事をめぐって

 郵便は,たしかに相手に届くものであるという考え方は,前提としてとりたくない。なぜならば,郵便が確実に相手に届くものと単純に考えるところには,学習が成立しにくいと思うのである。出した手紙が「無事相手に届くのであろうか」として雨の日を送り,風の日を心配するのが,子ども心でなかろうか。しかもその延長として,郵便のおじさんが,この雨にも風にも負けないで郵便を届けてほしい。しかもその仕事の内容は……と展開するのである。したがって,この学習の発想を大事にしたいのである。郵便物の届けられる経路は,この一環としてとらえさせるべきであろう。


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