研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 054/118page

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ことから,必ずしも矛盾とは言えないのではないかと思う。
 つまり「いる」の中には,低学年で広げるべき意味・用法の一群と学年をおって少しずつ広げられていく意味・用法の一群とがある,というのが,すなおなよみとり方であろう。

E 前記@とCのイは,ほぼ一致していて,この「いう」の意味・用法の拡大は,まず底学年において集中的になされるべきであるということはまちがいない。

F 前記@とCのウとは,Dの場合と同様,視点のちがいによるものであろう。したがって「する」もまた,低学年で広げるべき意味・用法の一群と学年をおって少しずつ広げられていく意味・用法の一群とがあるということになる。

(2) 「各『語い』の意味の広がり方の傾向」から見たとり扱い時期の考察

 各「語い」の意味・用法が各学年の教科書にどうあらわれるかについて,一般的傾向をみてきたが,つぎにひとつひとつの「語い」の場合を具体的に考察してみたい。

@ す る

ア.1年から3年までの教科書にもっとも数多くあらわれる用例が,「行為」の意味をもつ「する」である。各学年の用例数の中にしめる「行為」の用例数の割合は,1年がもっとも高く,63.6%,次が3年の44.3%,最後が2年の33.8%となっている。したがって,この意味・用法は1年で使いこなせるようにし,2年,3年では,他の意味・用法を理解するための比較材料として扱っていくことが有効な扱い方であろう。

イ.「状態」に関連する用例としては「1」,「2」,「3」,「6」,「7」,「9」と多いが,そのうち「1」,「2」,「6」は,2年の教科書にその用例が多く,とくに「1」では,1年の教科書に用例は見られない。また「7」の場合も,1年の教科書にはあらわれない。
こういう点で,2年の学習に,「する」があらわす「状態」に関するさまざまな意味をとりあげていくことが効率的であるということができよう。「6」を他との比較材料として使うことが適当のように思われる。
 ただ「3」のうちの「もう少しである作用が起こりそうな状態になる。」用例は,1年の時にでてくるだけなので,この場合は2年における集中的扱いの中にこの1年の材料を含めるのもやむをえないこととしなければならない。

ウ.「ア」,「イ」であげた以外の意味・用法については,比較学習の中にくみいれていけばよいであろうが,ほぼ2年を中心として「記い」の拡大をはかる計画がたてられればいいのではないかと思われる。

A い る

ア.1年から3年までほぼ平均して,しかもかなり多くの用例数をもつ意味・用法は,「ある場所に存在する」ことを表す「いる」である。1年で16.3%,2年で14.5%,3年で14.3%であり,2年と3年の用例の出現率が大体同じであり,4年以後もその程度ではないかと推定される。したがって,1年でほぽ定着,2,3年で反復練習という計画が自然である。

イ.「動作の進行」,「動作の継続」は,1年で,その意味・用法をじゅうぶんに


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