研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 056/118page
用例を比較しながら学習をすすめていくことが可能であろう。
D い う
ア.「しゃべる。」という意味・用法の「口に出す。」は1年が57.1%と最大,「口をきく。」は48.4%と2年が最大である。
つまり,同じ「しゃべる。」という意味・用法でも,「口に出す。」は1年において豊富な用例を使って学習させ,「口をきくむの用例は,それと比較させる程度とし,2年になってからじゅうぶん学習させる。2年での「口に出す」は,1年での学習をつかって「口をきく」と比較しながら練習とする。3年では再びその逆の方法をとる。
こういうやり方が効果があるように思われる。イ.「ア」以外については,「11」を除き,用例のあらわれ方が一様でないので,「1」をもとにして,比較しながら意味の拡大をはかっていくしかないであろう。
ウ.「11」の補助的用法については,3年で,その用例が急にふえているので,3年以上の学年において,その定着をはかるべきであろう。
4.むすび「語い」の意味を広げさせることが「語い」を豊かにすることである。「ありふれた単語が,教科書の文章の中にどんな意味をもってあらわれてくるか。」ということを調査整理することは,その意味で必要なことであるにもかかわらず,この面の研究成果はあまりあがっていない。
本研究は,小学校1年から3年までの教科書に使われている五つの基本的な動詞という限定の中での調査であり,各単語の文脈中の意味の決定についても必ずしも確信のもてるものではないが,今後研究団体等で共同で大規模な調査研究がすすめられ,「語い」の指導体系がまとめられるときの参考にでもなれば幸いである。
なお,今回は光村図書の教科書をとりあげたが,他の教科書は採られている題材も文章も異なるのであるから,それはそれとして同じ方法で整理した指導体系が必要となることをつけ加えて,ひとまず区切りをつけることとする。
(担当者 舘 野 勉)