研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 058/118page

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文学的文章の読みとりに関する研究

―人物の心情を考えながら読むことの実態分折―


T はじめに

1 心情の読み

 「人物の心情を考えながら読む」というのは,文学作品を対象に志向されている。これは,作者が人物に託して何を見,何を語ろうとしているかを考え味わうことへの橋渡しとなるものである。つまり,作品の主題の追求と深いかかわりを持つということである。このことが,文学作品(小学校では,童話・民話・物語)の指導において,「気持ち」の読みとりを,各学年とも中心課題として取り上げている理由であろう。(52年度・光村版)

2 授業計画を子どもの側からのものに

 最近,子どもの側からの思考の筋道を明らかにし,それを起点として指導計画を構想することの必要性が言われている。このような観点をふまえて授業計画を立案する場合,次のようなことがらについて配慮すべきであろう。
 ・ 担任している児童の読みの実態はどうであるか。それに即して,指導の目標に達成するために,どう授業を組織していくか。
 ・ 教材をどう活用して,児童の能力を高めるか。
 ・ どのような指導法をとるか。
 ・ 指導の目標の明確化・具体化と,それの一環としての評価をどう位置づけていくか。
 以上のことと関連づけて,教材の深い読みとりと豊かな解釈が行われるのは勿論である。

3 読みの実態は握

 前述のことからも,児童の読みの実態を具体的には握することは極めて大切なことである。それを,ここでは,「気持ち」の読みとりにしぼって考えていくことにする。
 まず,「気持ち」の読みのための前堤となる能力が,どう児童に定着しているか明らかにしようとした。次に,児童が教材をどう読みとっているか調査し,分折することにした。そのことを通して(この場合は,二年生の童話教材)読みの学習の改善のために,少しでも役に立てばと思うわけである。


U 調  査

 「気持ち」は,文章に直接表現されている場合と,直接は表現されず,他の何らかの方法により間接的に表されている場合とがある。ここでは,後者を主にとりあげる。だから,書かれていない「気持ち」を,その人物の行動や,会話や,表情などの叙述から想像する読みとなる。

○ 調査事項
 ・ 「気持ち」を読むための前堤となる能力・ 実際の授業の中での児童の読みとり
 ・ 読後の感想文

○ 調査対象 方法
 ・ 小学校二年  質問紙法  期日  10月

○ 教 材
 ・ みかんの木の寺 (光村図書 2年下)


V 実態の分折

1 前堤となる能力の調査について

 「気持ち」を読みとる能力に関連するものとして,つぎの能力を調査した。この場合,「みかんの木の寺」の指導を,念頭においた。

(1) 調査問題のねらい

@ 漢字を読む力をみる。
A 主語・述語をとらえる力をみる。
B 書いてある通り読む力をみる。


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