研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 085/118page
がとまったのを確めて取り出す。
A 解剖のしかた
○麻酔したヒヨコの腹面の羽毛を水でよく濡らす。腹面を上にして解剖皿にのせ,肛門からくびの先まで幅1p位はさみで刈りとる。
○肛門近くにはさみを入れ,腹部を切開し,胸骨も切断して内臓を露出させる。B 消化器官の取り出しかた
のどのところで食道を切断し,口腔から肛門に至るまでの消化器官(肝臓やすい臓をつけたまま)を,切断しないように取り出す。これをリンガー液の入ったシャーレ(直径9o)に入れ,消化管を切らないように注意しながら腸間膜をはがして消化管を引き伸ばす。
C 消化管をそのう・前胃・砂のう・小腸・盲腸直腸の各部分に切って,それぞれ小型シャーレ(直径6p)に移す。小腸はさらに3部分に分け,〔前端(十二指腸),小腸中央部,小腸後端と呼ぶことにする。〕を各々小型シャーレに入れる。
D 十二指腸からすい臓をはがし,小型シャーレに移す。
E 各部の消化管を切開して,その内容物のようすと,万能pH試験紙を用いて,内容物のpHを測定する。
F 各々の内容物を少量(糞1個と同量)試験管(直径12o)にとり,蒸留水を2加えてよく振ったのち,遠心分離(2000回/分で2分間)にかけ,その上澄み液を0.3時計皿にとり,10%NaOH3滴と1%CuSO43滴を加えて反応を調べる。
この反応はタンパタ質の有無を検出する反応で,以下これをビューレット反応と呼ぶ。(4) 結果と考察
図−1は,ヒヨコの消化器管のつくりを模式図で表わしたものである。
この図から,ヒヨコの消化管は1本の管からなりたっていることがわかる。
食道の中央には,袋状のそのうがあり,食物を一時的に貯蔵している。続いて前胃と砂のうがある。
前胃を切開してみると,内壁には多数の小さなまるい突起があり,消化液を分泌している。
鳥類では歯がないので,砂粒をのみこんで,砂のうで食物を細かくする機械的消化が行われている。砂のうを切開すると,内壁はかたくてやすり板のようになっており,ひだがある部分とない部分とがみられる。砂のうから出てU字形に折れ曲っているのが十二指腸で,その間にすい臓が付着
表−1 消化管の内容物のようすと内容物のpH,およびビューレット反応
餌 そのう 前胃 砂のう 十二
指腸 小腸
中央部 小腸
後端 盲腸 直腸 糞内容物のようす 餌と同じく
粒状でぬら
ぬらした粘
液が混入餌と同じぐ
粒状で餌
を水で湿ら
せた状態黄褐色の
トロトロした
液状におい
がしない黄土色に
変わり,水
分少なくね
ちねちして
いる黄土色が
濃くなり,
水分はさら
に少なく固
形化する茶褐色のど
ろどろした
液でくさい褐色がか
って水分が
ずっと少な
く固形化し
てくさい内容物のpH 6 2 2〜3 7 7 8 6〜7 8ビューレット反応 ± ± ± ++ + − − − −※ 土はごくわずかな反応,+は反応あり,++は反応顕著,−は反応がないことを表わす
※ 餌は配合飼料(成鶏用)をふるいで分け,粒の細かなものを与える