研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 086/118page

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している。十二指腸に続いて曲りくねった細長い小腸があり,腸間膜が付着して多数の血管が小腸壁に分布している。この腸間膜をていねいにはがし,小腸を引き伸してまっすぐにすると,ほぽ中央に卵黄のうがみられる。ふ化直後では卵黄のうは非常に大きいが,日が経つにしたがってだんだん小さくなっていくので,ヒヨコの発育に卵黄が使われていることを示している。小腸の後端に左右1対のY字形をした長い袋状のものがついているのが盲腸である。盲腸の基部(小腸に付着しているところ)から肛門までが直腸(大腸)で短い。これは糞などなるべくはやく排出させるため短くなっている。

 つぎに,消化管の内容物のようすをみると,表−1のようになっている。砂のうと十二指腸の間で大きく変わっていることがわかる。まず砂のうまで餌と同じ色であったものが,十二指腸では黄褐色に変わり,形状では,十二指腸から粒状でなくなってしまうことなどである。前者では十二指腸へ黄褐色の液を分泌する器官があると考えられるし,後者では前述のとおり砂のうで機械的消化が行われていることを示している。

 内容物のpHについてみると,そのうではpHが6であった内容物が,前胃ではpHが2になっているのは,前胃から強い酸性を示す液が分泌されていることがわかる。また砂のうではpHが2〜3であった内容物が十二指腸ではpHが7で中性になっていることから,十二指腸に注ぐ液はかなり強いアルカリ性を示し,砂のうからの内容物を中和するはたらきをもっていると考えられる。

 なお十二指腸にはすい臓が付着しており,十二指腸の後端には胆のうから出ている細い管が連絡していることから,すい臓から分泌されるすい液と,胆のうから分泌される胆液とが酸を中和するものと思われる。これらの液が内容物と混合して小腸内を流れ,小腸後端に行くと水分も少なくなるのでpHが8に変っていくのではないだろうか。

 内容物のタンパク質の有無を調べるビューレット反応の結果をみると(表−1),そのうと砂のうでは,ごくわずかにうすい青紫色に変色したのが認められる程度である。それに対して十二指腸では濃い青紫色から濃い赤紫色に,小腸中央部では,淡青紫色に変色していることがわかる。ところが小腸後端から直腸や盲腸では,変色が認められない。この結果からタンパク質は小腸中央部まであって,小腸後端からなくなっていることをとらえさせることができる。

 ただし,このビューレット反応をすい液にも行なってみたところ,淡青紫色から赤紫色に変色したことから,消化酵素のタンパク質でも反応が現われることになる。

 したがって,十二指腸でタンパク質が多く検出されたことは,砂のうでの機械的消化によってタンパク質が多く出たからなのか,またはすい液などの消化液が多く分泌されたから消化酵素のタンパク質が多くなったためか,このビューレット反応の実験だけでは判断できにくいので問題があるように思われる。

3 寒天平板法によるタンパク質分解酵素のはたらきを調べる実験

1) ねらい

○ 寒天平板を用いてタンパク質分解酵素がどの消化器官から分泌されるか確認する。
○ いろいろなpHの寒天平板を用いて,タンパク質分解酵素の最適pHを調べる。

2) 準 備

@ 材料・器具・薬品

○ ヒヨコの各消化管,スキムミルク(タンパク質34.9%,脂肪1.0%,乳糖52.3%),寒天末,円形ろ紙(パンチした直径5.5oのもの),氷
○ シャーレ(直径9o),メスシリンダー,上皿天びん,ビーカー,湯せん鍋,ガラス棒,温度計,駒込ピペット,ピンセット,はさみ,試験管,電気定温乾燥器,ふ卵器,加熱器具,電動式遠心分離機,テフロンホモジナイザー,パラフィルム,ノギス,注射筒(50用),スライドガラス
○ボーキニンB(Pヒドロキシ安息香酸5g,70%アルコール95


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