研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 088/118page

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写真2
   A     写真2     B

 そのう,前胃,砂のう,十二指腸,小腸中央部小腸後端,盲腸,直腸の分泌液では,みな写真2のAのようになって,すい臓の分泌液だけが,写真2のBのようになった。そして無色透明部の直径を測定したところ,すい臓では次のようになった。

直径(o)
平均
すい臓
10.2,10.6,9.9,10.8,11.4,11.2
10.7

 この結果から,すい臓から分泌される液だけがタンパク質を消化するはたらきがあり,前胃では分解するはたらきがないことになる。
 胃ではたらく消化酵素はペプシンが代表的で,このペプシンは,胃壁の主細胞で分泌されたペプシノゲンが,壁細胞から分泌された塩酸によって活性化されてできるといわれている。

 ペプシンは一般に陽イオンのタンパク質を消化して,水溶性のペプトンやプロテオースにする。それで塩酸による活性化がなされないためではないか。前述の実験で,前胃や砂のうの内容物のpHを調べたところ,表−1のようにpH2〜3であったことから,前胃や砂のうでは酸性でないとタンパク質が分解されないのではないだろうか。そこで上記Fの方法で酸性の寒天平板をつくり,胃液を浸した円形ろ紙で実験した結果は,写真3と表−2のようになった。

写真3
  pH2    写真3    pH4

表 - 2 胃液の各pHにおける無色透明部の直径

直径(o)
平均
pH 2
10.8,11.8,10.9,11.2,10.9,11.1
11.1
pH 3
11.0,11.5,11.3,11.5,11.7,12.0
11.5
pH 4
7.0, 7.4, 7.8, 7.8, 7.6, 7.8
7.6
pH 5
0,  0,  0,  0,  0,  0
0

 同様にすい液でも実験した結果は,写真4と表−3のようになった。

    pH6           pH7
写真4
    pH8    写真4    pH9

表−3 すい液の各pHにおける無色透明部の直径

直径(o)
平均
pH 6
13.2,13.0,13.0,13.0,12.2,13.2
12.9
pH 7
14.5,14.5,14.0,15.0,14.2,14.8
14.5
pH 8
15.3,14.9,14.9,15.3,15.2,15.2
15.1
pH 9
13.6,13.2,13.6,14.4,12.9,13.6
13.6

 この測定値をもとに,1時間に分解したタンパク質の量をグラフで表わすと図−4になる。

図−4 酵素のはたらきとpHとの関係
図-4


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