研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 089/118page
表−2と図−4から,胃液の最適pHはpH2〜3の間にあり,pH4になるとタンパク質を分解するはたらきが急に小さくなり,pH5ではほとんどはたらかない。
表−3と図−4から,すい液の最適pHはpH8のところにあり,胃液にくらべてタンパク質を分解するはたらきがかなり強いことを示している。
このように同じタンパク質を分解する酵素でも分泌する器官によって最適pHがちがうこと,いいかえれば,酵素のはたらきはpHの影響をうけることが理解できるであろう。
なお,スキムミルクの寒天平板では,ボーキニンBなどの防腐剤を添加しないと,盲腸など中にいるバクテリアによって無色透明部が形成されたり,空気中のバクテリアが発生したりする。
特にシャーレや,パンチした円形ろ紙,ピンセットなど,乾熱滅菌を充分行なうようにする。ただボーキニンBの場合は70%アルコールを含むので,消化を抑制するような作用がないかどうかが問題で,添加する量や,他の防腐剤の使用など検討する必要がある。
4 ろ紙電気泳動法によるアミノ酸の検出実験
(1) ねらい
○ 電気泳動装置を用いて,各消化管内容物のアミノ酸の多少と,何種類ぐらいのアミノ酸が検出できるか調べる。
○ 市販のアミノ酸を電気泳動させて比較してみる。(2) 準 備
@ 材料・器具・薬品
○ ヒヨコの餌と糞,各消化管の内容物
○ 教育用電気泳動装置(マルチゾーン),予備緩衝用槽,ピンセット,メスシリンダーものさし,電気定温乾燥器,時計皿,駒込ピペット,テフロンホモジナイザー,電動式遠心分離機
ろ紙 脱水用 (20×20p) 東洋ろ紙 No.2 支持体用 (10×25p) 〃No.51 塗布用 (0.2×1p) 〃 〃
○ 市販のアミノ酸
緩衝液 5N酢酸pH1.7
ニンヒドリン液(95%エタノール100,ニンヒドリン0.1g)A 試 料
○ ヒヨコの糞と同量の餌および各消化管の内容物をとり,それぞれに蒸留水2を加えて,テフロンホモジナイザーで数分間ホモジネイトした後,遠心分離(3000回/分で3分間)にかけその上澄み液を時計皿にとっておく。
※ふ化10日後のヒヨコを使用した。
○ 市販のアミノ酸を,先のとがったピンセットを用いて,その先に少しつけ,時計皿にとって0.5の蒸留水を加えよくかきまぜておく。
※使用したピンセット,テフロンホモジナイザーなどはその都度よく洗ってアミノ酸が付着していることのないように注意する。(3) 方 法
@ 東洋ろ紙No.51(10×25p)のろ紙の右端を陽極側とし,右端から5p,8p,20pの位置に鉛筆で線を引き,ろ紙の両端5pの位置でろ紙を下方に折り曲げる。(図−5)
A 折り曲げ終ったろ紙は5N酢酸pH1.7の緩衝液の中を通して充分に緩衝液を浸みこませる(予備緩衝させる)B 予備緩衝の終ったろ紙を,乾燥した他のろ紙にはさんで余分の緩衝液を吸いとる。
C 電気泳動装置の左右の電極槽に緩衝液5N酢酸pH1.7をそれぞれ200入れる。
D スライド式支持板を左右の赤印の位置に固定する。(マルチゾーン)
ろ紙を支持板に張り,押え板で固定する。支持板より左右にあるろ紙の部分は左右の電極槽に入れ,緩衝液を充分に吸いこませる。この場合,両支持板に支えられたろ紙部分がたるまないように,左右の支持板をいくらか左右に移動させる。(図−6)