研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 106/118page
繊維は,1箇の細胞にあたり,これが50〜150本ずつ第一次内筋周膜で包まれて第一次筋束を作っている。第一次筋束が50〜70個ずつ,さらに第二次内筋周膜で包まれ,第二次筋束を作る。第二次筋束が多数集まり外筋周膜(強じんな厚い総合組織の膜)で包んで筋肉を形成している。
写真10は筋肉の縦断面であるが,筋繊維が縦にはしり,結合組織によって結合している。
2) 結合組織,脂肪組織
結合組織は,写真10で見られるように筋繊維や脂肪組織を包むもの,筋肉や蔵器を他の組織と結合するものであり,また皮や腱などの主成分をなし,骨の基質を形成する強じんな繊維状の組織である。結合組織を構成する繊維のおもなものは,コラーゲン,エラスチンなどである。
脂肪組織は結合組織の一種で内蔵器官の周りや皮下組織,結合組織や筋肉内に沈着している。(2) 調理上の注意
私達が購入してくる豚肉は,写真9,10で見られるように筋繊維が多数集まり,幾えにもコラーゲンやエラスチンのような固い繊維で結ばれているものである。
調理の際,写真10のように肉繊維に対して縦に切った場合は結合組織も長く,加熱によって熱凝固し,固くて食べにくいものとなる。
写真9のように肉繊維の流れに対して直角になるように切るのがよい。また結合組織の多いものは固いので用途に応じて肉の選択が必要である。カツレツ,ソテーにはヒレ,ロースなどの結合組織の少ない柔らかい肉を用いる。結合組織の成分のコラーゲン,エラスチンは長時間煮るとゼラチン化して柔らかくなるので,これらが多く固い肉はシチョーなどの煮込み料理に用いるのがよい。
4.まとめ
揚げ物の調理指導の際に,調理技術をささえる条件として必要な資料を実験を通してまとめたものである。
食品の調理性の指導にあたり,示範,スライド,0・H・Pなどにして,理論の裏づけとして見せ,科学的な根拠を理解させるようにしたいと思う。それを通して,調理中に起こる物理的,化学的変化に目をむける習慣をうえつけたい。
そのためにも,応用性や転移性にとんだ技術指導をめざして,その習得の過程で科学的な追求を重視したい。
魅力ある教材の扱い方をし,学校で教わったものを創造的に生活に生かし,明るく豊かな家庭生活を常に心がけるような生徒に育てたいものである。
◆ 参 考 文 献
中学校技術・家庭科研究の手びき 文部省調理と理論 山崎・島田共著調理実験 松元・吉松共著家政学実験シリーズ3 山西貞編著ベル・ロウ調理実験 栄養と食糧Vol.16 No.5 梶本・向井共著食品の組織学的研究(T)〜(W) 星野忠彦著食品組織学 市川収 著(担当者 佐藤清子)