研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 110/118page

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とが逆転してしまった。かかるX交差の逆転劇が演じられたのは大正9年から14年の間であった。このことは日本が急速な工業化を推進してきたことを物語ると同時に,日本経済社会をささえていた柱が農業から工業に変わったことを意味している。
 その後,第二次世界大戦という異常な状態があったからこそ,今日の構造変動のスケールとスピードが加速化されたものと思われる。

 しかし,超長期的観点に立ってみれば,農業主導型の産業構造から,工業主導型の構造へ,そして,第三次産業,とくに,知識・情報を基礎として急成長が予測されているシステム産業や技術開発産業主導型の産業構造へと移行してゆく方向にある。このような産業構造の変動を就業構造からもとらえることができる。

B 就業構造の変動

 第2図によれば,時代の推移とともに第一次産業就業者の占める比率が下がり,昭和60年度には8.1%にまで低下すると推計される。このことは,日本で職業をもっている人のうち,農業を中心とした第一次産業に従事する人が大幅に減少し,往時,日本経済の主導産業であった農業が急激な変化を遂げている。
 これに対し,第二次・第三次産業就業者の比率が高まり,特に第三次産業の就業者比率が昭和40年度には第二次産業の就業者比率を上廻り,ますます拡大する傾向にある。昭和60年度における就業者の比率は55・4%と推計されるほどになり,就業者構造の変ぼうと進展がみられる。

C 情報化時代

 このような日本の産業構造の変化は,諸外国と比較してスピードが速く,西ドイツやフランスの13倍,カナダの4.3倍,アメリカの2.3倍といわれている。変化の速い経済社会に対応してゆくためには,新しく,高度な情報・知識を大量に必要とする。しかし,大量な情報や知識を有効に活用するためには,個個の知識・情報が体系化され,ひとつのシステムとして組みたてられてゆかなければならない。物を生産,流通,消費することを中心課題としていた考え方から,物を効率的に生産,流通,消費させるために必要なシステムを開発することのほうが,より中心課題になる。

 情報化社会への移行は同時に工業化社会における主柱産業の地位を大きく変容させつつある。情報化仕会にあっては,かつて工業化社会をささえてきた鉄鋼,電力,石油,石油化学,自動車,電機,住宅などの物を生産する産業はもはや主導産業ではない。それぞれの生産―流通―消費のシステムを生産するシステム産業である。

 システム産業は知識と情報基盤の上に立って初めて成立する。この産業の発展のためには,多くの情報と知識を大量かつじん速に処理し,総合的に判断することができるシステムの開発が必要であり,それを可能にしたのがコンピュータの出現である。ハードウェアが開発されることによってこれを駆使するソフトウェアの開発が飛躍的にすすん

第2図 部門別就業者構造 (「予測・日本経済」矢野誠也著)
第2図


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