研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 115/118page
ミュニケーション,さらにゴミ処理や公害防止などの諸施設の諸工程も,コンピュータを利用した制御方式にどんどん変換されていくであろう。
そしてそこで活動する人人は,その自らの仕事を行なっていくために,ほとんど例外なく,コンピュータを利用した情報処理を扱っていかなければならなくなる。
教育においても例外ではなく,各レベルの教育において,多かれ少なかれコンピュータによる情報処理が,その教育のシステムと方法のなかにとり入れられていくことになろう。
こうした社会のなかでは,情報処理の高度な専門技術者がますます多く必要とされていくことになるが,一方では,情報処理技術は,単に情報処理の専門技術者のみの固有技術としてではなく,一般の各分野の技術者や管理や事務担当者が一様にもち,実用化していかなければならない基礎的な技術となってくる。
これは先の国民の「一般的教養としての情報処理の知識」とは異なるもので,それは,それぞれの仕事をコンピュータによる情報技術を用いてどう処理していくかの実際的な知識であり,実践的な技術である。も少し具体的にいえば,それぞれの分野の人人が,それぞれの仕事をもっとも有効に果たしていくために,コンピュータによる情報処理を最大限に利用したシステムとして運用していくように対象をは握し,分析・設計・作製し,実施・運用していく技術,それに必要なプログラムを自ら作成し・運用実行していく技術,こうした情報処理の実際的技術が各分野の人人にとって一様に必要な基礎的技術とされてくるのである。
このような情報処理教育を秋山穣教授は「基本的技術としての情報処理の教育」とよんでいる。
以上のように,情報処理教育の必要性は,コンピュータを利用した情報処理の発達と普及浸透により,まず基本的に第1には国民一般にとっての「一般的基礎教養としての情報処理教育」の必要性から,第2には各分野で活動する人々によって一般的に必要な「基本的技術としての情報処理の教育」の必要性から生まれてきている。
さらに,情報処理専門技術者養成のための情報処理教育の必要性も重要な問題であるが,われわれがこれから考察しようとする高等学校商業科の情報処理教育の対象外であるので割愛したい。
われわれは情報処理教育の必要性についての視点をしっかりは握したが,高等学校の情報処理教育はどこを原点として,どのような目的をもち,今後どう進展してゆくだろうか。
(2) 高等学校における情報処理教育
ここで想い出されるのがいわゆる理産審の「高等学校における情報処理教育の推進について(建議)」である。建議」は,情報処理教育の目標について,次のように述べている。
「……一般的には,情報処理に関する基礎的な理解を深め,適切な情報処理を行なうための基礎的な能力と基本的な態度を養うことにあると考えられているが,その教育にあたっては,単に知識を習得させるということにとどまらず,実際に電子計算機を使用させることを通じて必要な資質を養うようにすることが肝要である。」そしてまた,「単に情報処理技術者の養成という狭い見地からのみ行なうことなく将来の担当業務に関する教育とを調和させて行なうことが必要である。」
このような目標を達成するために,推進学科の提言を行なって,情報処理科,情報技術科を核とする教育の推進は,いわば点から線,そして面へとひろがりをもつものであり,将来への大きな構想を秘めたものであった。現在は急ピッチで進展した段階から鎮静化の段階に入ったともいわれており,本物かどうかの岐路に立たされているといってよいであろう。
高等学校における情報処理教育は基本的には生徒の発達段階にふさわしい基礎教育としてとらえるべきであろう。このような基本的なは握のうえに立って,生徒の進路などに応じた適切な知識と技術を習得させ,創造的にこれらを応用する能力を養うことが高等学校の情報処理教育の役割である。現段階での,高等学校学習指導要領にもとづく高等学校の情報処理教育は,次の三つの形態で行なわれている。