研究紀要第30号 学年・学級経営の改善 - 019/024page
それでは,学年主任は自分の学年の経営をいかなる場面から充実していこうとしているか,図16-3をみてみる。
学年経営の領域は広い。いずれの領域から充実をはかるにせよ,それは実態が決定する。しかし,アプローチを決めることは,共通理解をはかるために,はなはだ有効であることも事実である。西堀栄三郎氏は「研究管理と人間問題」の中で,小集団運営の基本で最も重要なのは「異質の協力」であるとのべている。学年を学校全体からみて一つの小集団とみた場合,まさにこの言葉の通りである。
なぜならば,異質の協力とは決して異質の人全員が,一丸となって同じように成ってしまうという画一的な性格のものでなく,メンバー各人の個性を尊重し,各自の持ち味を十分に生かすことであり,また生かせるようなシステムでなければならないからである。
学年経営の要諦も,おのずとそこに存するであろう。
V ま と め
これまで述べてきたように,学年経営は学校経営の実質的な内容を構成する中核的なものであり,学校経営の実際的展開の場である。
つまり学校の教育目標を,その学年の児童・生徒をして,どのような方針にもとづいて,どのような方向に実現するかを決定し,それにもとづいて学年としての教育の実際活動を計画し,実施するということである。ここで問題になるのは学年と学級の経営についての関係であるが,同じ経営といってもそれぞれ異なった機能をもっていることはいうまでもない。その最終的に目指すところが学校の教育目標に即した総合的な教育活動にあるにしても,具体的な展開過程において両者はそれぞれ個有の分野を担っている。いうなれば,学校経営が学級の児童・生徒の特質をふまえて担任教師の独自性のある教育活動が展開される所であるに対し,学年経営は各学級の相互連携を図りながら,学年教師の共同責任のもとに運営していく経営体である。
このように考えるならば,同学年の各学級の教育は同じ水準でなされなければならない。学級の独走,学級の孤立は許されない。
同学年のどの学級でも同じ水準の教育が行われるためには,学年経営が確立している必要があり,そこに学年経営の調整的機能がある。しかしその反面,学年経営は教師の各学級における自由にして創造的な教育活動を保証する場でなければならない。そこに学級の相対的孤立性がある。本調査で学年経営に対する問題点として,学級経営を規制し画一化するという意見がみられたが,(図15-1)学年経営の立場が,全体的な調整と統一性を一つの重要な機能的傾向として有するとしても,各学級の自由で創造的な活動の余地をなくすことは妥当とはいえないであろう。学年経営は,学級単位で行われる学習指導,あるいは諸行事等の学級抱任教師の個性ある教育実践を,(それが学級王国主義でない限り)学級経営との関連で伸長させる場でなければならない。
学級経営をたての系列と横の系列の両面からは握するとき,学年経営は学校経営に対してたての系列となる。たての系列には三つの作用がある。下降と上昇と,往復作用のそれである。従来の学年経営を考えた場合,下降作用にくらべ,上昇の作用は必らずしも十分であったとはいえない。そのことは学年経営の自主性とも関連がある。
今後のあるべき学年経営を志向するとき,上昇作用と,その往復作用の流れの機能化を図ることでなければならない。
W おわりに
この調査は,県下の小学校および中学校の調査から,学年経営の実態をとらえようとしたも