研究紀要第31号 児童・生徒の学習能力の発達と授業に関する研究 - 043/043page
A発言の分析による方法(発言内容−反応・応答)
1単位時間で全員の反応(理解度)をみることが困難な場合もあるので,上位,中位,下位群の児童を指名して応答させることによって概略の理解度等が評価できる。この方法は教師が発した「質問」いわばテストにおける「問題」と同様で,学級のひとりひとりの児童に自分はわかっているのかどうかを確認させるための鏡の役割をするものである。だから「わかっている人」「知っている人」を教師が見分けて指名するのではなく,その発問内容に関して,全部の児童に自分がわかっているのか,わかっていないのかを確認させるのが目的である。また発問の正解に「はば」を持たせ,児童から多様な反応が得られるようにしたい。誤答を含めた多様な考え方がつかめるように問いかけを工夫することも必要である。
B作品の分析による方法(ノート,学習カード,作文,図表,グラフなど)
児童に資料を作成させるということは,資料を書くという操作をすることによって資料を正しく読みとる力に結びつくのである。作品の評価はややもすると表現のきれいなものを高く評価してしまう傾向が見られるが,何をはっきりさせようとしたか,資料を忠実に見たり,作図はていねいであるか等を評価したい。
Cテストの利用(客観テスト,論文体テストなど)
単元の学習が終了した時点で,単元の目標が学習者においてどの程度具現したか確かめるものである。しかし単元学習の終了時となると評価の結果指導へのつながりはやや遠くなってしまう。
(3) 評価にあたって留意したい点
○気づかれない評価
児童は評価されているという意識があると自由な思考と表現が高まらないので評価されているという意識を持たせない配慮が必要である。
○評価の迅速さ
評価のための学習ではなく,あくまで指導の手がかりとしての評価であるから,意図された評価の場では短時間に,確実には握できる方法を考えていかなければならない。
○抽出児による評価
抽出する場合は,全体的な傾向をは握する場合,抽出児そのものを評価する場合,学業不振児の原因追求の場合などが考えられるが,目的により十分考慮しなければならない。
○客観的な評価
チェックリストによる観察評価は,教師の主観による評価になりやすいので客観化をはかるためにも評定尺度や詳細な観点をきめておかなければならない。
(4) おわりに
資料活用能力の育成をはかるために,準備された評価を完全に実施しても,能力の分析に立った資料の吟味や教材解釈が十分なされていなければ無理なことである。さらに,学習成立のよしあしが判定できるように,評価観点と評価基準を明確にするように進めたい。具体化した観点と基準は,資料活用能力育成をはかるためには不可欠な基本条件であると思われる。
また,教師には常に鋭い観察眼が要求される。
これは資料活用能力の評価には観察による方法が多く用いられる。発言にしても,作業にしても短時間で観察してさらに分析して次の分節や次時にいかさなければならない。そこが教師の技術の力量が発揮されるところである。そのほかにも,分類,整理,解釈のために確かな観察眼が要求される。
(担当 佐藤隆昭)
参考図書 ○資料活用能力の指導 ○6年の学力と評価事例 ○一斉指導の改善 ○よい社会科指導の条件 ○社会科の構造,計画,展開