研究紀要第31号 児童・生徒の学習能力の発達と授業に関する研究 - 042/043page
評価3は,評価2と同じく図表のもつ二つの機能の上にさらに対比した読みとりを加えて評価した。ここでは,C児(下位群)に対して,このまま授業を進めれば不完全な読みとりになってしまうおそれがある。そのため,わずかな机間巡視中に個別指導の必要があった。個人のためのフィードバックである。3名であったので指導が容易であったが,これが多くの児童の場合は,全体指導にきりかえ,教師のフィードバックが必要になる。
傾向や特色をつかむ読みとりは,B児(中位群)も多少あいまいさがあったので,全体指導をとり入れた。このため時間が超過したが,評価によりフィードバックを予想した弾力的な指導過程を組むことが大切であると思う。
6 まとめ
(1) 評価とフィードバック
学習過程での評価,学習成果の評価は,単元を展開するための指導計画に対してもいくつかの問題を提供してくれる。計画された数々の評価のフィルターをくぐりぬけてみて再び指導方法が考えさせられることになる。
学習のスタートをきるとき,資料活用能力を分析し,毎時の学習に位置づけて指導してきたが,評価を行なうことにより,フィードバックの必要性が生じた。その後さらに評価していくという指導の方法をとり入れる。つまり,計画−指導評価−修正という段階がくまれる。
この三つの場合は一つだけで成り立つものではく,サイクルをなしている。しかも評価の場で終わることでなく,計画,指導の修正につながっていくのである。そのためには,指導計画や指導過程に柔軟性が必要である。また,この評価は,指導者の立場からだけでなく,学習者である児童自らも評価できる自己評価としておきかえることができる。この場合,指導の方向には自ら学びとろうとする意欲となってかえり,それに指導者が加わって展開される。
(2) 資料活用能力の評価の機会・方法
資料活用力の育成をはかるためには,前述のように,計画・指導・評価のサイクルのつみ重ねが必要である。評価の機会は主として学習過程の中で行なわれる。毎時を事前,事後に分けて評価し,能力育成のために修正処理することは大切であるが,毎時の学習では,分析された能力の要素のひとつひとつをとり上げて評価していくことは困難である。しかし,可能な範囲内で評価方法と機会を考えていかなければならない。
○ 評価の機会として
@一つの単元学習にはいる前(事前評価)興味,関心のは握,学習事項の確認
A授業展開の過程の中(授業評価)
指導改善のため,自己評価
B毎時間の授業終了時,または一単元の学習終了時(事後評価)
学習成果のは握
○評価の方法として
@観察による方法(チェックリスト,評定尺度法,挙手など)
学習者が学習目標に向かって資料を収集したり,資料を作成したり,資料を操作したりする時間と場をつくることが大切である。教師のみが一方的に資料の読み方や説明をしているのでなく,児童の活動を活発にし観察し評価する。小学校高学年から資料集や参考書から必要事項をノートにまる写しする傾向も見られるので,説明できるようにしなければならない。しかし,情意的なものは直接外部に表われてこないのでこの方法には限界がある。