研究紀要32号 教師の教育相談的態度の実態調査とその考察 - 001/020page

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教師の教育相談的態度の実態調査とその考察

 

1 はじめに

 今日ほど,子供の生活をより充実させるために,教育相談が重視されてきているときはない。そこで,今回の研究では,教師や学校は,教育相談をどのように考え,どのように実践しているのかを調査し,分折と考察を試みた。

 いうまでもなく,教育相談のねらいは,子供個人が当面している悩みや問題を話し合いなどの手だてを用いて解決してやり,生活によりよく適応させ,かれらが生まれながらにもつている力を,十分に発揮できるように,子供の自己理解・自己実現を援助してやる活動にあるといわれている。

 このように,教育相談においては,子供をまず「理解すること」が重要である。しかし,この「理解する」ということばに,どういう意味を持たせ,どのような立場で,どのような基本的な姿勢をもって臨むかによって,子供,時にはその親や教師などの周囲の者に対する援助・助言や指導の方法も大きく変わってしまう。たとえば,われわれ教師は,子供に問題があるとか,親が悪いとか,あの先生が悪いとかと問題をとらえ理解しようとしがちである。しかし,このようなとらえかた,このような理解の方法では,真の教育相談,真の生徒指導はなしがたい。かりに,ここに息子と疎遠な感じを持ち始めた父親がいたとする。この二人がある時,ふろ場で身体の流し合いをし,父親は父親の権威をふりまわすことなく,役割意識にもとづかない本当の人間らしさで息子と話し合えば,二人は"人"本来の姿を共に感じ合えるようになることは当然のことであろう。

 これと同じように,教師も「教え育てる」という教師本来の姿をすなおに表現し,己を理解し子供の心情を理解すれば,必ずや子供との共感的関係が生れ,育ってくるものである。これは態度であり,心構えであって,決して方法ではない。

 上記の教師の相談的心構え,相談的態度については,「生徒指導の実践上の諸問題とその解明」(文部省)に,次のように述べられている。

 「教育相談にもさまざまな立場があるが,もし心構えということばを,どの立場をとろうと,共通する土台となるような基本的な考え方という意味にとれば,その中心をなすものは,相手のことばを,相手の使っている意味において,理解しようとする態度であるということができるであろう。

 それは………どんなに自分の考えから離れた考え方であろうと,あるいは明白な誤解であろうと,この人は,そう考えている,そう感じているということを理解するということである………」。

 しかし,現実の学校という場においては,このような「自己を受容し,他人を受容する態度」で教育相談活動が全面的に行われているとは言いがたいのではなかろうか。このような観点から,教師の教育相談はどのような態度で実践されているのかの具体的な状況を知るために,まず「スクール・カウンセラ・テスト」を自作し,その中に10の相談場面を設定した。さらにこのテストを使い,それぞれの教師の反応の実態をは握した上で,当センター第3研修部のコンピューターを使用し,教師の相談にとりくむ態度の概要をとらえてみた。

 とかく教えよう教えようという意識が先きにたち,育てて行こうとする心のゆとりや態度の少なさがあるといわれる現代の教師に,相談的姿勢の確立ができるように,さらには,本研究が,生徒指導の校内体制づくりの一助として,少しでも役くだつようにと願う次第である。

 

2 調査目的

 前項でも触れたように,調査対象は,主として昭和52年度の当教育センターの各種講座に研修の


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