研究紀要第33号 学習指導に関する研究 - 008/092page

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 表8・9から,1人の教員が地理的分野と歴史的分野を担当している場合が圧倒的に多い(98%)ことがわかる。また規模の小さい学校は,同一学年の地・歴を1人の教員が担当していることが多い。これは,教員の定数などによるものと考えられるが,中には2人以上の教員が担当しており,その実情は担当時間の都合による分割担当の結果と推測される。

 同一学年の地・歴を1人の教員が担当するか,2人以上の教員が担当するかにかかわらず週あたり地・歴を2時間ずつ授業している場合(45%)と単元ごとに地・歴を授業している場合(48%)が多い。このことは,学校規模とはあまり関係がないように見られるが,子細に考察すると11学級以下の小規模校では,週あたり地・歴を2時間ずつ,19学級以上の大規模校では,単元ごとに地・歴を授業している場合がやや多いことに気づく。

 このように,調査によると県内の大半の学校では,週あたり地・歴を2時間ずつ授業,または単元ごとに地・歴を授業するという地歴並行学習が行われているといえよう。

4.地歴並行学習上の問題

(1) 地歴並行学習の長所

@ 「中学校指導書 社会編」にあげられた長所

● 生徒の意識,能力などの発達段階に即して,継続的に学習させることができること。
● 生徒の意識,能力(技能を含める)などを継続的に伸長させることができること。
● 地理的分野および歴史的分野の学習の成果を,それぞれ公民的分野の学習に直接結びつけることができること。
● 3分野が相互に補い合い深めながら,教科全体としての学習成果を高めることができること。

A 実践校があげる長所

● 地理的分野と歴史的分野の指導内容のむだな重複を避けることができること。
● 地理的分野と歴史的分野の学習の一方が好きで,他方がきらいな生徒の場合,並行学習であるときらいな分野をカバーして,好きな分野が次時にくるという楽しみをもたせることができること。
 この他にも長所があげられているが,比較的生徒の立場からとりあげたものが多い。

B 調査に現われた長所

 表10は,前記の地歴並行学習を実施しているものを対象に調査したものである。したがって教員の立場からの判断が多い。その中で地歴両分野の関連が深まる(48%)と広い視野から学習できる(26%)に注目したい。

表10 地歴並行学習の長所
項     目
度数
%
ア.地歴両分野の関連が深まる
28
48
イ.広い視野から学習できる
15
26
ウ,変化があってよい
9
16
エ.地歴両分野の学習が均等化される
9
16
オ.社会科の本質にかなう
6
10
カ.能率的・効果的である
3
5
キ,深みのある地歴学習が展開できる
3
5
ク.生徒からの評判がよい
2
3


(2) 地歴並行学習の問題点

 地歴並行学習の長所が多くあげられる中で,地歴並行学習についての意見を求めると賛成33%に対して反対が51%を占める。その反対理由を示したのが表11である。

表11 地歴並行学習の短所(反対理由)
項     目
度数
%
ア.学習意欲が中断する
30
47
イ.教師・生徒の負担が過重である
25
39
ウ.進度がずれる
24
38
エ.系統的な指導ができない
20
31
オ.理解不十分なところがある
14
22
カ.非能率的である
12
19
キ.評価しにくい
6
9
ク.教師の得意,不得意に左右される
4
6

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