研究紀要第33号 学習指導に関する研究 - 009/092page
この理由は次のように整理される。
○ 学習指導上の問題
● 学習意欲が中断する。
● 系統的な指導ができない。
● 理解不十分なところがでる。
● 非能率的である。
● 生徒の負担が過重である。
○ 教科経営上の諸問題
● 進度がずれる。
● 評価しにくい。
● 教員の負担が過重である。
○ その他の問題
● 教員の得意,不得意に左右される。
@ 学習指導上の問題
半数近くのものが指摘した地歴並行学習の短所に,学習意欲が中断するということがあげられるが,これは従来から指摘されていたことで,地歴並行学習の最大欠点であるとされる。このことは,前時の課題意識が次時につながりにくいということであり,それを補うには復習に多くの時間がかかる。したがって,時間不足となり,計画した指導内容を十分に消化させないうちに授業を終えなければならない状態になる。考える社会科といいながら,じっくり思考させることができずに暗記社会科になる傾向がある。このために,理解が不十分になる,非能率的であるということにつながるということである。
理解が不十分であるということに,1年生には歴史的分野の学習はむずかしいということが含まれている。学習する人物,事象,年号が多く,歴史的用語になじみにくいものがあり,教科書の表記もむずかしいということをあげている。
系統的な指導ができないということは,小間切れによる時間的な断続にともなう教員の不安でもある。生徒の負担が過重になるということは,学習する生徒には教科数が増加したような印象を与え,宿題の量が多くなるということであって,これが学習指導に悪い影響を与えるということである。
A 教科経営上の問題
進度がずれるということは,学校行事があったり,欠課が生じた場合,担当学級の進度のバランスがくずれるということである。
評価しにくいということは,1人の教員が1分野のみ担当した場合には担当学級が多くなり,生徒の十分なは握がむずかしく,正しい評価ができないということであり,1人の教員が2分野を担当した場合には,2分野の評価研究も十分にできず,質の浅いものになるということである。さらに,通知票,指導要録の評定の際の両分野の取り扱いについての問題がある。教員の負担が過重になるということは,1人の教師が同一学年の地・歴を担当する場合,教材研究や資料の準備等に負担がかかり,他学年にまたがって地・歴を担当した場合その負担はさらに重くなるということである。
このように,教科経営上にも多くの問題点があるが,社会科としてもっとも危惧すべきことは,地・歴両分野をそれぞれ週2時間に分割できることからおこる全教員の担当時間の均等化をねらう小間切れ配当・担当であり,場合によっては臨時免許状による一時しのぎ的な措置がとられるということである。
B その他の問題
教員の得意,不得意に左右され指導に偏りがでるということは,あってはならないことながら,教員の専攻分野によって,地・歴いずれかの分野に軽重をつけた指導になるということである。
その他の理由として,ザブトンの良さを捨てきれないということがあったが,何事につけてもザブトン型と比較し,ザブトン型の長所のみを見て地歴並行学習の短所が目につくということである。
5.地歴並行学習現状の考察
地歴並行学習の賛否の理由を調べると,賛とするものは,理念的な立場から論ずる場合が多く,巨視的なものである場合が多い。また否とするものは,現場的な発想に基づくもので,微視的なも