研究紀要第33号 学習指導に関する研究 - 010/092page
のである場合が多い。従って,いずれを是としいずれを非とする二者択一的な決断は早計であるといわなければならない。そこで,地歴並行学習に伴う問題について,一つ一つ考察を加え解決の糸口をさぐりたい。
(1) 学習指導上の問題についての考察
@ 学習意欲が中断することについての考察
地歴並行学習における授業以外の場合でも,生徒の学習意欲を喚起させ,持続させる努力をしているが1時間の授業の区切りがあり学習意欲は中断するはずである。地歴並行学習の場合にこのことが強調されるのはなぜか追究してみる必要がある。しかし,残念なことに地歴並行学習の場合に意欲が途切れ,そうでない場合に意欲が持続されたという科学的な実験データが見当らない。そして,単にザブトン型学習と比較し,時間的に次時との間にある空間が長いからとする場合が多い。
心理学的に見て,中学1年・2年生の学習意欲は,どの程度持続できるかの問題があると思われるが,本当に前時の授業と寸分の時間をおけない程,緊迫したものなのだろうか。確かに,探究学習などにおける1単元1サイクルで2時間以上の授業を展開する場合,連続した方が良い場合がある。それにしても,適当な間というものが効果的である場合はないだろうか。(例えば,生徒に課外学習などにおいて調査学習をさせるなど。)
そこで,次のように考えたい。つまり,機械的に,地・歴を1時間ないし2時間ずつ交互に授業したり,または小単元ごとに地・歴を決まったように交互に授業したりするよりも,指導内容に合わせてある時は小単元というまとまりを大切にし,交互に,または1時間ずつ交互に授業を進めるのが適当ではないかということである。
なお,単元は,大・中単元より小単元の方が,単元と単元の間の学習意欲の持続ということから望ましいと考える。従って学期ごとに地・歴を学習するのはこの点から考えても不適当であると考えたい。
A 系統的な指導ができないことについての考察
地歴並行学習は指導内容の系統性がうすれるということは,何を指すのか明確ではない。2時間おきに地・歴二つの分野を交互に授業するので前後の関連が薄れ,まとまりがなくなる,流れが中断するということをいうのかも知れないが,少なくともそれで系統性が薄れることにはならないと思われる。つまり,それは前時の理解が不十分であったということにならないだろうか。また,かりにそれで系統性が薄れるとすれば,極論ではあるが,系統のある限り続けて指導しなければなるまい。さらに,生徒の能力から推測して,それに耐え得るだろうか疑問である。
従って,この対策を考える時,まず大切なことは系統性のある指導内容の精選であり,配列である。それが十分にできていない場合は,どんな対策も効を奏しないであろう。系統性のは握は,そう簡単にうすれるものではない。
不十分な理解への対策として指導内容の精選はもちろんであるが,授業の導入・終末段階での予・復習を十分に行う必要がある。最近は課題の設定・検証の段階に多くの時間をさき,既習内容をふまえた課題のは握や検証の結果の位置づけ・まとめの時間をおろそかにする傾向がある。これは,不十分な理解を促進する危険性をもっていると考えられる。
B 学習者(生徒)の負担が大きいことに対することについての考察
社会科の授業の中で地理と歴史の二つの分野があることは,あたかも2教科であるという錯覚にとらわれるし,週2時間の少ない学習時間とはいえ,美術や音楽が同様に週2時間であることから2教科と考えるのは当然のことかも知れない。
しかし,だからといって生徒の負担が増加したのだろうか。お茶の水女子大学教育学部附属中学校の酒井綾子教諭の研究調査の結果(同校研究紀要第4集)を見ても,必ずしも生徒の負担が過重になったとは断定しがたい。