研究紀要第33号 学習指導に関する研究 - 013/092page
図2 学校規模別担当分野(教科)数の割合
従来は,進度のずれ,評価の問題とともに担当分野数が多いという問題は,担当教員一人の問題として処理される傾向にあった。そのため一時的な対策になり,問題の根本的な解決になり得なかったきらいがある。そこで考えたいことは,教科経営という立場から研究すべきだということである。
近年,学校経営の研究とともに,学年・学級経営が研究されつつあるが,教科経営も重視し研究をすすめなければならない。社会科の場合,担当する一人の教員だけでは解決できない問題が山積しており,この地歴並行学習上の問題もその一つである。社会科の本質を見失わず,全社会科担当教員の英智を結集しなければならないと思う。教科経営上の対策と学習指導上の対策にわけて述べてきたが,これで地歴並行学習が円滑に運営されるとは思われない。つまり,仏作って魂入れずのことば通りこれでは不完全であるということである。しからば完全を期するにはどのようにすればよいかということであるが,次の二つのことを考えたい。
一つは,先入観念を捨てた地歴並行学習への研究意欲の高揚である。
地歴並行学習をはじめて7年,未だ地歴並行学習が定着しない最大の原因は,従来のザブトン型を守ろうとする態度とザブトン型の簡便な運営法への愛着にあるのではなかろうか。この愛着をたち切り,積極的な革新への意欲を高める必要がある。そのためには,一人一人の教師の自覚もさることながら,現場最高責任者である校長をはじめ,教科書編集者など社会科教育に携わるすべての人々の地歴並行学習への理解と協力が必要である。二つには,地歴並行学習の良さを明確にせよということである。
このことについては,一応,中学校指導書社会編第3章指導計画と学習指導,1指導計画の作成(P369)に四つの長所(本文P7)をあげられているが,これらについての実証的研究報告が少ないということである。今回の調査によると,県内の社会科担当教師は,生徒の意識・能力の発達について認めているが,中学生段階では個人差が大きいので個別指導で補うのが良いとするものが過半数を占めていた。それならば個人差をどのようにとらえ,どのように指導しているかとなると答えは容易にかえってこなかった。
このように,社会科における生徒の意識や能力などがどのような発達段階をもっており,それをどのように継続的に指導したらよいかについての,実証的な研究が少ないのである。指導書の説明だけで十分に納得させることはできないと思う。
また,指導書には地・歴両分野の学習成果を公民的分野の学習に直接結びつけることができ,さらに3分野の相互補完によって学習成果を高めることができると述べているが直接結びつけることの良さとその必要性について,ザブトン型でも工夫をすればできるという意見に対し,現場的な調査研究資料が不足するように思われる。
5.地歴並行学習への試案
地歴並行学習の課題に答えるのは至難の業であるが,一応とらえた課題に対する一つの試案として話題を提供したい。
(1) 試案の構想
@ 社会科の教科構造を崩さない,つまり,地理的分野,歴史的分野,公民的分野の固有の性格やねらいを尊重し,地歴両分野の学習を基礎にし,公民的分野の学習を展開