研究紀要第33号 学習指導に関する研究 - 014/092page

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する教科構造を崩すものではないこと。

A したがって,地歴並行学習を実施するが,それぞれの分野の独走を防ぎ,相互関連を強化するものであること。

B 地歴並行学習の良さを味わせるために配慮すること。
 ○ 生徒の意識,能力などの発達を促すものであること。
 ○ 両分野の学習成果を生かせること。

C 義務教育,つまり小・中学校における社会会科教育の関連をおさえたものであること。

(2) 試案

戦後,問題解決学習を中心に歩んできた社会科は,学力の低下,「はいまわる社会科」との批判を受けて,学問的系統を重んじた系統学習への転身が早かった。このいきさつをここで論じている余裕はないので省略するが,問題解決学習は捨て去られる程,価値のないものなのだろうか。決してそうではないと考える。

 発見学習は,系統学習と問題解決学習を志向するものとしてとらえられたものであり,二つの学習法を対立させるべきものではないと考える。今後の社会科の学習指導には,各分野の独自性を生かすために系統学習を採用し,3分野の関連をはかるために問題解決学習を計画的に取り入れる余裕をとりたい。従って,発見学習的手法を取り入れることを妨げるものではない。
 社会科の究極のねらいは,民主的・平和的な国家・社会形成者を育成することにあり,それにはは正しい社会認識を基盤としなければならない。

この正しい社会認識は,歴史的認識だけをさすものではないし,他の二つの分野だけで得られる認識を指すものでもない。民主的・平和的な国家・社会の形成者を目指す生徒に求められる社会認識は,三分野で得られた認識の総合であり,分野別指導は社会科指導法の一つでしかあり得ない。従って,一つの分野にのみ偏り,指導することは社会科の究極目標をゆがめてしまうことになる。そのために,公民的分野において地歴並行学習で得たものを基盤として学習を展開させ,総合化していくことを狙っているが,第3学年の公民的分野における指導を待っていて良いのだろうか。

 36年版の学習指導要領に歴史的景観の指導がとり上げられたり,地理的分野における諸地域の指導の中で歴史的背景の指導がとりあげられた理由の一つには,このことがあったのではないだろうか。
 そこで地理的分野と歴史的分野を融合した単元を作り,指導計画に位置づけることを考えたい。

 この単元の学習は問題解決学習の手法をとり入れ,生徒の主体的な学習活動を期待し,社会科の醍醐味を味あわせたいものである。この単元では,それまでに学習した歴史的な学習内容・方法などと地理的な学習内容・方法などを駆使させ,地理的な認識に歴史的な認識を,または,歴史的な認識に地理的な認識を相互補完させる形をとりながら互いに高めていくのである。そのことによって,認識の仕方が深まり,視野が計画的に拡大され,各分野の偏重が妨げられるのである。
 さらに,この単元を社会科における生徒の意識・能力の発達を促す場としたい。

 地歴並行学習の良さを味わせるには,この学習の長所(本文7ぺージ参照)を十分生かすことである。この長所の内,最も留意すべきは,生徒の意識・能力などを発達段階に即して,継続的に学習させることができるということと継続的に伸張させることができるということである。

 しかし,中学生段階における意識・能力の発達は,残念ながら十分に解明されているとはいえない。今回の研究はこれを明らかにしようというものではないので,くわしくは触れないが極めて重要な課題である。

 島根県立教育センターの研究は,学年別に発達する歴史的意識と思考力を図3のようにまとめ,その確かさを実証している。この研究では,地理的意識の学年別発達にまでは言及していないが貴重な研究でありその成果を生かしたい。

 図4は,実証的な研究を経たものではないが,島根県立教育センターの研究を参考にして,地理


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