研究紀要第33号 学習指導に関する研究 - 019/092page

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新任教師のための教材研究入門
−中学校数学−
 
車 田 喜 宏
(研究相談部)

1.はじめに

 初めて教壇に立った思い出は,いつまでも鮮明に残っているものである。
どんな内容をどんなふうに教えたか,生徒がどんな反応を示したか,といった記憶はほとんどないが,異様な興奮状態で夢中で1時間の授業を終ってしまったことのほうが懐しく思い出されるものである。
 また,新任の数学教師として,意気ごんで授業を展開しながらも,ままならぬ生徒の反応をみては落胆し,挫折感を味わったことは誰もが体験することである。

(1) 新米も一年たてば古米

 新任の教師は,4週間から6週間(少ないところで2週間)の教育実習期間中に経験したことや学びとったものを土台にて,あるいは中学校時代に受けた授業を思い浮かべながら,自分の授業を構成し展開してゆくわけであるが,教育実習の短い期間では体験できなかったことや解決できなかったことが,毎日の授業ですぐに要求されてくることが多い。

 しかし,わたし自身のことをふりかえってみるとき,新任の教師として考えていた素朴な疑問や自分の意見が,現在自分のもっている教材観や数学教育に対する工夫に大きく影響していることに気ずく。したがって,新しく教師としてスタートをきった人にとっては,再現することの出来ない尊い毎日の体験を計画的に記録し,累積していくことを望みたい。

 新米も一年たてば古米となり,三年もたてば古々米といわれるように,新鮮な感覚で教材を見,思いきった発想のできるのは新米教師の特権でもあります。慣性的な見方をし,現状に妥協した発想をする前に,自分のアイディアを大切にした教材研究のし方を是非進めていってほしいものである。

(2) 新任教師と教生の違い

 新任教師と教生(教育実習生)の違いは,まず,要求される仕事内容や心構えにある。それらを要約してみると,
 ○自分の担当する学年についての,年間指導計画(教材内容の配列や時間配当)を立てなければならない。
 ○題材(単元)の指導観を確立させ,具体的な題材の指導展開案を作成しなければならない。
 これら2つのことについては,実習期間中には実際に手がけることはなかったと考えられる。ここまでは,ほとんどの場合,指導教官によって作成されていることが多い。したがって,指導計画(年間,単元)を作成することは,はじめての経験になろう。

 さらに,
 ○担当する生徒の実態をより適確には握されることが要求される。つまり,生徒の一人一人の能力や地域の特性に深い理解をもたなければならない。
 ○生徒とのつながりを親密にしなければならない。生徒と教師の信頼関係がなければ,学習が成立しないからである。
 ○1日に,何クラスにもわたって授業をすることになる。ときには何学年にもわたることがあるが,これも実習期間中には体験できなかったことであろう。
 いずれにしても,一番の大きな違いは,


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