研究紀要第33号 学習指導に関する研究 - 020/092page

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指導の結果に直接的な責任をもたなければならないことである。限られた少ない自分の時間を十分に生かして,深い教材研究を要求されるゆえんがここにもある。

(3) 先輩教師から後輩教師への願いをこめて

さて,わたし自身が新任教師として教壇に立った頃,"教材研究とはどういうことなのか","教材研究はどのようにすすめていったらよいのか"ということについて悩み,"このような授業でいいのだろうか"ということにいつでも迷っていたことを思い出す。

 先輩教師の助言や教示に勇気づけられて方向性を見出し,各種の研究会に参加したり,さらには参考文献を読みあさりながらも,経験したことのない悲しさから,遅々として進まない教材研究に焦燥感をもったのもたびたびであった。

 このような,うよ曲折した一人の先輩教師の体験から,新任教師に是非実践していってほしい教材研究のための視点や手順・方法について述べるのが本稿のねらいである。
 したがって,一般的な,総論的な教材研究のあり方をのべるのでなく,毎日の授業実践の手がかりになるような,具体的な教材研究のあり方を,体験論的に例題を示しながらのべてみたい。

2.教材研究の意義とそのねらい

 "教材研究"という意味は,ひとことでいえば"教師が教材についての研究を深め,専門的知識を深める"ことであるといえよう。しかしこれだけでは不十分で,具体的にどのような研究をしたらよいかがわからない。やや具体的にのべてみることにする。

教材研究を十分にしてから授業にとりくむようによくいわれますが,いったい教材研究とはどんなことをすればよいのですか?

 まずはじめに,教材研究ということばについて概念規定をしておこう。教材研究とは,
 「教材そのものについて十分研究し,その教材が,
@ どんな教育的価値をもっているのか。
A どんなしくみになっているのか。(教材の構造化)
B どんな関連をもっているのか。(教材の位置づけ)
などを明らかにし,それに総合的な考察を加え,さらに実際の授業の過程を予想して,学習指導案の大要を作るまで。
ということがいえよう。
 つまり,教材についての,広い,そして深い解釈をするにとどめることなく,具体的な指導の流れを確立するまでの,広義の解釈の方が実際的であろう。
 指導過程の確立をすることまでなぜ必要かということは,例をあげながら説明してみよう。

〔例〕 ジョルダンの閉曲線定理

 3年の教材として位相がある。この教材についての教育的価値や教材の解釈のし方についてはたくさんの意見があり,指導内容さえ教科書によってまちまちなのが現状である。出版されている6社の教科書のうちもっとも多くぺージ数をさいているのが30ぺージ,もっとも少ないのが10ぺージという極端な差になっていることからもわかろう。

 いずれにしても,ジョルダンの閉曲線定理については多かれ少なかれふれてある。いま,T社の教科書をみると,開曲線と閉曲線についての定義,具体例とその判別法,ジョルダンの定理(長々と難解な文章でのべているが,簡単にいうと,閉曲線は内部と外部にわけられること),といった記述のしかたをしている。このことを,いかにていねいに説明を加えていっても,この順序のとおりの指導では生徒の学習意欲を喚起することができないし,学習の必要性もわいてこないであろう。指導の工夫(指導過程)が問題になってく


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