研究紀要36号 学校経営改善に関する研究 学校経営評価に関する研究 (第1年次) - 002/022page

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1.学校経営の概念について

 学校経営,学校管理,教育経営,教育行政といった用語は,理論的にはそれぞれある特定の立場と意味を押さえて解釈され,用いられなければならない。しかし,実際の学校にあっては,それらの用語は、概念や定義があいまいなまま,立場や意味も整理されないまま使われることが多い。そのため,学校経営の改善をめざした経営評価を論ずる場合にも,例えば,評価の主体者をひとつ取りあげてみても,「校長が評価をする」「いや,教職員がするのだ」といったところで論が分かれ,混乱することがよくある。このような違いは,学校経営に直接携わる校長とそれに参加する教職員について,また,経営過程における評価と計画の機能について,といった学校経営の基本的な考え方や概念の差異によるところが大きいからと思われる。

 こういった経営概念の差異はどこからくるのだろうか。まず差異の大もとにあると思われる学校経営研究の立場の違い,また学校経営の概念についての諸説を資料的にとりあげ,次に研究上のわれわれの考え方を述べることにする。


(1) 学校経営研究のいろいろな立場

 学校経営の概念は,次に述べるように大きく三つに類別される研究上の立場と,学校の教育機関としての自律性を容認していく四つの立場の違いによって分かれてくる。※1

〈研究上の立場の違い〉

@ 学校経営の根拠を現代法学的法解釈に求め,法の適正な運用と行政的課題解決に主眼を置く法規主義的な学校経営研究
A 合理的・能率的な経営と管理の,組織と運営を実現しようとして,現代経営学の方法を援用する経営学的な学校経営研究
B 学校教育を形成する社会的体制とその諸要因を解明し,学校の組織と運営に国民(住民)の教育意志を反映して,学校運営を方法的に改善しようとする社会学的な経営研究

 まず,このような三つの研究上の立場の違いがある。それが,さらにそれぞれ複合し,重複しあいながら経営研究を形づくり,その研究の主となる立場によって特色づけられてきた。

 また,学校経営における自律性をどのような形でどの程度認めていくのか,その違いによっても学校経営の概念の差異が生じてくる。

〈自律性容認の立場の違い〉

@ 法令解釈に基礎をおく行政管理的立場
A 経営の機能領域と内容の拡充を,地域的総合性の観点から確立しようとする教育委員会を経営主体とみなす立場
B 学校を独自の社会的教育緒秘本ととらえ,自律的な経営体とする立場
C 学校の組織・運営を,父母住民・教師などの参加によって自治的に行っていこうとする社会的教育自治論の立場

 この四つの立場が先の三つの研究上の立場とかかわって,学校経営の概念をつくりあげている。

(2) 学校経営の概念のいろいろ

 前記の立場の違いによって学校経営の概念は諸説に分かれる。ここでは,学校経営の実際に大きな影響を与えている二つの立場,ひとつは戦前からの系譜の上に立つ「法規主義的立場の学校経営論」他のひとつは企業における経営学の方法を援用した「経営学的立場に立った経営論」をとり出し,とくに後者に重点を置いてその学校経営概念を探るための参考としたい。

@ 法規主義的立場に立った経営概念

 厳密にいえば,法律用語としては「管理」(統制・監督)の語のみあって,「経営」の語はないといえる。この「管理」概念について,荒木広氏は次のように述べている。
 「公法学的意味での学校管理とは,経営学的概念では区別されていた『経営・管理・運営』の総合された機能であり,設置者による学校に対する『支配』の総称であって,例えば,人的管理,物的管理,運営管理について


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