研究紀要36号 学校経営改善に関する研究 学校経営評価に関する研究 (第1年次) - 003/022page

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それぞれ法的根拠を持たなくとも,校長,教職員に対して指揮監督,指示命令,あるいは規則制定を行うことができる機能である。いわゆる特別権力関係理論に裏打ちされた管理概念である。」※2

 学校教育法(第5条),地方教育行政の組織及び運営に関する法律などによる支配権に基づいて,教育機関としての学校の本来の目的に到達するよう学校を管理するという見解である。「学校管理」が「学校経営」の上位概念であるとする。

A 経営学的立場に立った経営概念

 近代経営学の理論や技法を学校経営の中に授用しようとする経営学的立場に立ち,「学校経営」を「管理」の上位に概念づけている。学校の本来の目的に到達する-教育目標の実現のための経営機能の一つに「管理」があるという考え方である。なお,この場合法規を無視するのではなく,その法制の枠の中で学校経営を考えていこうとする態度である。

 この項では,本県教育委員会発行「学校教育の手引き」の概念規程に影響を与えた吉本二郎氏,また学校経営についての著作も多く,当教育センターの学校経営講座の講師でもある牧 昌見氏,このおふたりの学校経営についての論をとりあげておきたい。

○ 学校経営に対する法制の枠と教育行政

 ● 吉本二郎氏
  「教育行政は規則を定め,法令の権威において単位組織としての学校にそれを遵守することを要求する……学校経営の権限の本質は,公の支配権によって定められており,これを無視することはできない。」※3

 ● 牧 昌見氏
 「教育経営は,学校経営と教育行政と社会教育経営によって,教育の目的を効果的に達成するための諸条件を整備し,これを有機的に運営する営みであって,もっとも包括的な概念である。教育経営の主たる主体は国および地方公共団体である。教育行政は,教育経営を効果あらしめるために,国および地方公共団体が行う教育サービスを保障する機能を,主として法制的枠組の設定とその運用によって果すものである。教育行政は,学校(教育)行政と社会教育行政に大別される。」※4

○ 学校経営概念についての定義

 ● 吉本二郎氏
 「一つの学校組織体(協力体系)の維持と発展をはかり,学校教育本来の目的を効果的に達成させる統括作用。」※5
 「学校の基本的計画や諸活動,およびこれらに必要な諸力を包括する統括的体制を作り出すことが経営であり,いわば学校協同体が組織の力を振るうように機能する創意として受け取られ,学校管理は学校経営に盛られた創意を現実化する機能を担うものと考えるべきであろう。」※6

 ● 牧 昌見氏
 「学校経営は,単位学校における教育目標の効果的達成のための諸条件を整備し,これを有機的に運営する営みである。学校経営は,この機能を果たすために,学校運営と学校管理を二本の支柱とする。

 学校運営は,学校における教育実践を人的,物的,財政的条件の最適の組合せにより,効率的・能率的に促進する機能を受け持つ。
 学校管理は,学校(教育〉行政を通じて導人される公教育の実施に関する制度的枠組を,単位学校に即して再編成し,単位学校における教育活動の水準の維持と向上を保障する機能をもつ。」※7

(3) 研究上における学校経営概念

 法制的枠組の中での経営であることを前提にし,現実の学校をとりまく行政財政的問題や,学校教育目標の設定から計画,実施,評価の過程すなわち学校教育の目標実現のための諸問題を考慮にいれ,本研究における学校経営の概念を次のように定義づける。


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