研究紀要36号 学校経営改善に関する研究 学校経営評価に関する研究 (第1年次) - 004/022page
教育を行う機関としての学校が,教育の効果をあげるのにふさわしい組織と運営を実現しうるように,@校長を中枢として,A必要な人的物的および教育活動に関する計画を設定し,その展開を行う作用である。 上記の概念規定の中の@Aについてもう少しくわしく述べたい。
要点1 「@校長を中枢とする」ということは,校長が学校経営における経営の主体者であることを意味する。
経営活動は,教育目標実現のために展開される諸活動が円滑に行われるように支援促進するためのものであり,その経営活動の過程で生起する諸問題について,最終的な意志決定を下すことのできるのは校長だけである。この意味で学校経営の主体者を校長とするのである。この場合,一般の教職員は,校長の意志決定のための準備段階に関与することで,はじめて経営に参加することができる。
この意志決定の過程については,次の四つの段階があり,教師が経営に参加するということは,この四段階に関与することなのである。※8@ 「職別」の段階
問題の所在と性質を明らかにする。
A 「分折」の段階
問題に関連する事実の収集と分折を行う。
B 「立案」の段階
可能な問題解決の複数の方法を考案する。
C 「選択」の段階
その解決方法の効果や副作用の比較による最適の方法の選択を行う。なお,教師の経営参加には限界があり,その限界について高野桂一氏は次のように述べている。
「『選択』の段階では,参加者が一応二者択一的に選択の意志を表明するとしても,それがそのまま経営管理者の選択となる絶対的保障はない。それを尊重するかしないかは,経営管理者のリーダーシップ(能力と姿勢)にかかっているのである。(略)
経営参加という概念においては,このようにいつも参加者たる教師の集団的意志決定がそのまま学校経営の意思決定そのものとはならない。という限界が内包されている。」※9
学校経営における校長と校内教職員の関係について以上のようにとらえ,学校経営の概念を形づくりたい。要点2 「A−に関する計画を設定し,その展開を行う作用」を,PDSの経営過程(M-anagement cycle)でとらえようとする。
学校経営の目的は,教育活動の効果をあげることにある。そのための経営活動を,計画・実施・評価その更新計画・実施・評価といった動態的な流れで考えていく。すなわち,PDS
● 目標の設定,方針の決定,手順の決定といった計画機能(Plan)
● 権限の委譲,リーダーシップの発揮,調整や統制,そして教育活動の実施の機能(Do)
● 差異の分折,結果の評価,改善策の発見といった評価の機能(See)
のマネージメント・サイクルの原則に従い,経営の成果を科学的に評価し,次の計画にフィードバックする連続的な動態的な経営のあり様を考えるのである。
要点1で述べた教職員の経営参加についての考え方は,経営過程における評価→計画の過程にかかわるのである。
学校経営評価のあり方は,学校経営をどう考え展開していこうとするのかその考え方の違いによって異なってくる。本研究の基盤となる重要なものとして,ややくわしく述べた。2.学校経営評価の経緯と問題
(1) 従来の学校経営評価
これまでに,多くの学校経営評価基準やチェックリストが登場し,経営改善の試みがなされ