研究紀要第37号 登校拒否に関する研究 - 011/022page

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  エ.育児は祖母が担当し,ほとんど自由に遊ばせていた。祖母は5年前に死亡。

(3) 家庭の状況

 ・父: 44歳,農業。子どもの養育には無関心放任で,消極的拒否型である.子どもには理論でさとす方である。学校不信感強い。
 ・母: 44歳,看護婦。きびしくて,母親的なやさしさにやや欠ける。物事は合理的に処理する。子どもとの接触は少ないようである。積極的拒否,溺愛型。
 ・姉: 16歳,高校1年生。母と親密につながっている。中学時代の担任はA男の担任と岡じであった。
 ・祖父: 孫がかわいくてたまらない。過保護のタイプ。

(4) 診断

 @ 担任の先生からは,行事に参加しなかったり,忘れものがあると,その都度しかられており,先生から離れたいという気持ちが強かった。担任は姉と比較してA男を指導した。
 A 学級では友人がおらず,孤立していた。
 B Y-G性格検査からもみられるように,小さなことを気にやみ,新しいことをやることには自信がなく,すぐしりごみしてしまう。
 C 身体を動かしたり,運動したりすることはあまり好まず,一人,部屋の中で物をつくっていることを好む。
 D 他人に対しては用心深く,人嫌いである。
 E 家にとじこもり,同じ学校の中学生や,近所の人に会うのをいやがっている。視線が気になってしかたがない。
 F 両親の養育態度は,拒否型で矛盾・不一致型であり,本人の性格形成には,かなり問題をはらんでいる。
以上のことがからみ合い,水泳恐怖がきっかけとなって登校拒否を起こしたものと思われる。ショックが大きかっただけに治療も長期化している。

(5) 指導方針

前年度までの指導と経過を参考にし,(4)の診断にもとづいて次の方針をたてた。

 @ 耐性強化のための運動療法を加味する。
 A 学校についての不安感の除去をする。 自律訓練簡便法の実施と,不安除去の強化暗示を活用する。
 B 日常生活における適応行動の引き出しとその強化のための訓練をする。
  ア.登校している時の起床時刻の徹底。
  イ.家庭での役割分担の遂行と運動の実施。
 C 学習の習慣づくりをする。

(6) 指導経過

 @ 面接と活動の経過

回数
特徴
面 接 と そ の 活 動
1

3







(4/11)新年度初の来所
 ・担任が変わってほっとした表情
(4/18)本人との初の面接
 ・印象-内気でまじめ,やや神経質なところがある。
 ・テレビゲームでラポートづくり
(4/25)「将来の希望」について話し合う
 ・自動車整備工希望,店をもちたいという。
 ・勉強の話になると口を閉ざす。
4

6






(5/2)親は口やかましくなくなった。
(5/8)ロールシャッハテスト実施。
(5/16)自律訓練を朝昼実施している。
 ・話し合いから次の事を約束
  ア.一週間のスケジュールをつくる。
  イ.生活日記を書いてみる。
7

8






(5/23)卓球を始める。30分(どんどん打たせる。)
 ・スケジュールを持ってきた。この通り実行している。
 ・日記書いてない。ノート与える。
(5/30)卓球50分(打ちやすいボールを返すと得意になって打つ。)


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