研究紀要第37号 登校拒否に関する研究 - 013/022page

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T 「それから」
A 「みんながぼくを変な目で見るんじゃないかと
T 「みんながA君を変な目で見るのではないかと心配するわけだね」
A 「ずっと休んでいたから,友達に会うのがやっばりいやだ」

 ・ここの時点で,学校に対する不安事項が3つ明らかになった。(―線内容である。)

B 不安除去の訓練

  −自律訓練簡便法+イメージ強化−

自律訓練簡便法により,心身のリラックスを図ってきたが,不安除去の効果をよりいっそう高めるために,簡便法の直後に不安内容のイメージをうかばせ,イメージの中でその不安と対抗させ,不安に打ちかつ耐性づくりを実践してみた。

 〈11回目の面接でのイメージ強化〉
暗示内容 「夕方家の前にいると,学校から帰ってくる友人に出会いました。A君は視線が合っても気になりません。気軽にあいさつができました。A君はもう,友人に会っても視線は気にならなぁーい。友人に会っても視線は気にならなぁーい。」

 〈12回目の面接でのイメージ強化〉
「夕方家の前の庭で,なわとびをしているところへ,友人が通り過ぎようとしました。『さいなら』と気軽にあいさつができました。A君はもう,友人に会っても平気です。友人に会っても平気でぇーす。」

 〈13回目の面接での強化暗示〉
家庭で自律訓練簡便法の直後に,次の強化暗示を入れて訓練することを指示した。
 ア.「お客さんに気軽にあいさつできる。」
 イ.「友人に会っても平気だ。友人に会ったら気軽にあいさつができる。」

 〈14回目の面接での強化暗示〉
 ア.「友人に会ったら気軽にあいさつできる。友人と気軽にお話できる。」
 イ.「やるべき仕事,やるべき学習も根気強くやり通すことができる。」
 ● A男はこのころから不安が解消し始めてきた。

 〈15回目の面接で〉
 ●友人,知人に会っても平気でいられるようになり,対人恐怖感がなくなってきた。

C A男の学級担任との相談(7/22)

 ・本人にはまだ会っていない。夏休みに家庭訪問をし,じっくりと話し合っていく予定である。
 ・〈担任へ要望〉
  ア.夏休み中に本人に会い,ラポートをとっていただく。
  イ.本人が学級の友人とも交流できるよう配慮されたいと話す。

D 学級担任のA男及び学級への働きかけ。

(7/29)家庭訪問,母と面接
(8/22)A男と初の対面。「学校へ行ってもいい」ともらす。(緊張気味であった。)
(8/23)A男と2回目の相談,2学期初めの予定と,学習にあたっての用意するものについて話す。
(8/24,8/25)学級の受け入れ態勢づくり。友人をA男宅へ遊びにやらせる。

E 夏休み後のA男の行動

8/28(月)母より当センターヘ電話があり「A男は,26日の始業式,それにきょう,と元気に学校へ行っております。ほんとにお世話になりました。」とのことであった。
以後,ずっと登校を続けている。

(7) 考察

@ 運動療法においては,本人は卓球に関心を示していたのでこれに専念させることにした。
40〜50分の時間をかけ,ア.必ず一汗流すまで徹底してやること。イ.意欲と技術が向上してきたところで試合を導入し,緊張感と成功感,敗けたときの意欲づけ(耐性づくり)に留意すること,を実践してきた。このことが,本人に根気と充実感・満足感をうえつける原動力になったものと思われる。

さらに,この卓球による充実感・満足感が


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