研究紀要第37号 登校拒否に関する研究 - 014/022page

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家庭での,なわとび・役割遂行・学習の習慣づくり等に対して,抵抗なくとりくむことができるようになったものと思われる。

A 学校に対する不安の除去には,自律訓練を中心に行なった。これは第11週より「自律訓練+イメージ強化」の訓練に入ったこと,第13週からは,家庭での自律訓練時に,不安除去の強化暗示を導入したことがからみ合って効を奏し,不安の解消につながっていったようである。

B 学習の習慣化は,運動や仕事に対する根気強さが身についてきたところで,第11週より活動にとりかかった。
自分から「英語と数学をやってみたい。」と言いだしたのをきっかけに,目標行動を考えさせた。それは「英語は2年の教科書を1日1ページ訳し,ノートにかく。数学は2年の数学の友の計算問題を,1日1ページノートにやる。」であった。

自分が提示した目標については,家庭で着実に実行してきた。その努力ぶりを大いに賞賛し,さらに,生活日記を用いて,赤ペンで励ましのことばを書いてあげた。学習を途中で投げださず,1日1日とコツコツやれたのも,生活日記に書いてあげた評価(心の交流)の効用は無視できない。

C 本人が2学期より登校できるようになったのには,ア.夏休み中,担任が家庭訪問をし,本人とのラポートがとれたこと。イ.学級の受け入れ態勢がよいふんい気であったこと。ウ.学年全体及び職員全体の協力があったこと,によるものと推察される。

現在,元気に登校を続けている。2学期は身体の具合で1日欠席しただけである。無遅刻・無早退を維持している。
「A男の活動のようすを見ていると,1年近くも休んでいた生徒とは思えない。」と担任は言っている。

4.まとめに

(1) 行動療法実施上の問題点と留意点

 @  「学習理論」を正しくは握しておく。
 A 子どもに接するときは,まず第一にラポートの樹立につとめなければならない。
 B 子どもの直面している問題を敏感にキャッチし,その気持ちを受容し,よく理解してあげる。
 C 行動療法実施中も,共感的な態度で接することが,子どもに自分で問題を解決する意欲をかきたてることになる。
 D 指導目標や方法については,子どもにできる限り,その内容を説明し,話し合ってから行うことが必要である。
 E 行動療法においては,診断によって指摘された症状の完全なる消失と,適応行動の確立をもって終わる。
 F 指導後の事例の追跡調査はできる限り行う。

(2) 現場おける登校拒否症児への行動療法の活用

 @ 不安感の除去には自律訓練とイメージ強化が有効である。
 A 一般に登校拒否児は活動性に乏しく,運動をあまり好まない。日常における運動の奨励は,耐性をつけるのに効果がある。
 B 指導にあたる先生は,子どもの一番信頼している先生か,教科指導に関係のない先生があたるとよい。
 C 段階的に登校させながら,やがて普通に登校できるように発展させる場合(継時近接法という),両親特に母親が,家庭から学校への登校行動の促進に大きな役割を果たすので,母親の協力がのぞまれる。

行動療法とはいえ,心の病気を治すには,その土台となるのは,相手との信頼関係である。従って,子どものありのままの気持ちを受容し,最後まで共感的態度で接することが大切であることを痛感した。


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