研究紀要第37号 登校拒否に関する研究 - 015/022page

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W 高校生で登校拒否を起こした生徒の事例とその治療的指導

1.はじめに

昭和53年4月より12月までの間,主訴が登校拒否で来談した高校生は16名である。
これを小泉英二氏の「登校拒否児のタイプ」により,分類してみると,次のようになる。

 ○心理的理由
   ・優等生の息切れ型……2名
   ・甘やかされ型…………5名
 ○精神障害…………3名
 ○怠学傾向
   ・無気力傾向………5名
   ・非行傾向…………1名
 ○その他……………0名

また,この16名中,男子は14名で圧倒的に多い。また,この中で普通科に通学している者は10名にのぼっている。
そこで,本事例では,甘やかされ型に,無気力傾向が加味された,普通科2年男子生徒S男を取りあげることとした。

2.問題の概要

 (1) 中学校時代までは,特に問題行動を起こしたことはなく,周囲から一応認められていた。
 (2) 高校に入り,1年生時に,継続で30日間欠席,理由は風邪である。
 (3) 2年生になり,始業式より5/15まで10日間欠席,理由は頭痛といっているが,怠休的傾向とみて,登校をうながしたが失敗する。
 (4) 土曜日は登校し,月曜日になると欠席しがちで,登校時刻になると気分がすぐれなくなることが学校側でわかり,怠休でなく,登校 拒否の徴候が疑われると,判断を是正している。
 (5) 5/18 本人,父,担任教師が相談のため来所。

3.本人および環境の状況

(1) 本人の状況

@ 学習状況および学習成績は,学習に対する意欲を欠き,授業時などは消極的・受動的で,家庭学習などもあまりしていない。従って,学翌成績も振わず,学級では下位群である。 (1年生時の学級順位44/48)
A 行動および生格については,諸検査の結果
抑うつ性大で,気分が変わり易く,さ細なことにも神経質傾向を示し,消極的で,耐性がなく情緒に未成熟の感が強い。

(2) 環境の状況

@ 家庭環境
  ○家族は,父(44),母(40),妹(6),本人の4人家族で,両親共かせぎである。
  ○両親のS男に対する養育態度は一致しておらず,特に,父はS男のいうことはなんでも認めることによって,子どもは親を信頼していると思っている。また,母は,年齢の離れた妹の方を心配し,S男をそれとなく避けている。
  ○ S男は,家庭の中では「素直でいい子」として育ってきている。

A 友人関係
 S男は学年,学級にこれといった親友がなく,中学校時代の同級生(某私立高校生)1名のみである。

B 学校生活の状況
 学校は大学進学希望者が多く,学習に気をぬいていると,とかくおいていかれやすい。
 1年より2年に進級のとき,組がえがあり,以前からの消極的な性格が,学級になじめず,孤立化を深めている。

以上のような資料(一部は初期面接において得たもの)から,次のように本人を理解し、診断および指導方針を樹立した。

4.診断

 (1) 精神的に幼稚であり,自我意識が年齢相当に健全な発達をとげておらず,非社交性が強い。
 (2) 両親の養育態度の不一致から,家庭においては,価値の基準が,規範とし明確に示されていない。
 (3) 学校側が最初怠休者扱いにし,登校刺激を加えたことが,神経症的傾向を助長してきている。

5.指導方針

 (1) 毎週,自主来談の形をとり,抵抗なく来所で


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