研究紀要第37号 登校拒否に関する研究 - 016/022page

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きるように援助する。できれば,来所曜日を固定し,時刻は本人に選択させる。
 (2) 神経症的傾向を弱めるため,自律訓練法の簡便法(以下ATという)を導入する。
 (3) 家庭は学校との連絡をいっそう密にし,父母の不適切な養育態度の是正をはかり,教育的権威の回復をはかる。
 (4) カウンセリングによって知り得た資料に基づく必要な処置は,慎重に行う。

6.指導経過

 ・第1学期本人10回,父5回,両親2回,担任教師2回,来所
 ・第2学期本人12回,父2回,来所

 ○初回 5/18
主訴の内容を知るため,父および担任教師からは引き出し面接を行う。さらに,父に対しては,親の養育態度を調べるため,親子関係診断テストを行う。
本人に対しては,ラポートを樹立することに努め,心理検査を行う。

 ○2回 5/26
診断および指導方針に基づく面接開始
面接の中で,神経症的傾向・無気力傾向がみられたので,ATを実施する。初回のため,受動的注意集中がうまくいかず,落ちつきがなく,効果がみられなかった。

 ○3回 6/2
家庭でもATを朝,晩と実行している。そのせいか,肩のあたりまでの温感をつかむことができるようになる。

面接の中で,「あんまり休んだので,なんとなく学校に行きづらくなってきたんです。こんなことではだめだと思い………退学した方がよいと思うようになってきたんです。………」

このことは,学校に行かなければならない気持ちと,行きたくない気持ちのかっ藤が表出されたことになり,S男がそれなりにどう対処してよいか迷っていることが,感情として明瞭化されてきたことを示している。

また,父の態度が変わり,「学校に行け,行け」とうるさく言わなくなってきたので,気分が落ちついてきたとも言っていることは,両親がS男のために,養育態度を反省し,努力してきていることをものがたっている。

 ○4回 6/9
前回は退学の話であったが,現在の状態では大学進学は無理なので,就職の方向で進みたい,と考えが変わってくる。
人生の生き方について,S男なりにある程度の自己洞察の芽ばえがみえてきたと判断したので,思いきって,奈良県大和郡山市の内観研修所に行き,そこで「もう一度自己を見つめ直してはどうか」と助言する。

 ○10回 7/25
7/16より1週間,内観研修所へ行き,自己をみつめ直す訓練を受けてきたことの報告をする。

T 「お父さんも…緒に出かけると言っていたんですがね……」
S 「はい,…緒に行きました。しかし,内観する場所は別々だったので,ぼくは3日目になると,家に帰りたくなって…けれど,お父さんも一緒だと思ったら,我慢できました。………一人だったら………多分,だめだったと今になって思っています」
T 「そう,しかし,我慢できたんですね」
S 「お前,このごろ前より明るくなったような気がすんだけど,どうなの?と,お母さんに言われたんですが,ぼくには特に変わったように思えないんですが……」
T 「で,今,言ったような事を,担任の先生に言ってみた?」
S 「先生もだいぶ元気になってよかったなぁーと言っていました。………それで……こんなものでよいのかなぁーと,今迷っているんです」

内観研修所へは,どちらかというと受動的に行ったせいか,自己変容の深さについて,自信がもてないように感じられたので,強化・保障のカウンセリングを続けた。

なお,後半になって,「前は就職希望だったんですが,やはり,これからがんばって,大学進学


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