研究紀要第38号 学習指導に関する研究 - 016/081page

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っている対象を,当面の課題に近よせるようにするとよい。

C 効果の原理を利用すること。

 刺激に対する反応に要求の満足が伴うように,学習した結果が,深い喜びを味うことができるようになれば,学習は定着し習慣化するものである。

D 適正な人間関係の確立をはかること。

 意欲は,自分一人だけの環境ではわきにくいものである。友好的なふんい気の中にあって,自分に正当な期待がかけられ,承認されている人間関係のもとで,自己の有用性を自覚した時に,意欲はわいてくるものである。

E 不安・恐怖・劣等感から解放してやること。

 親からいつも厳しくしつけられている生徒は,学校に来ても,なんとなくおどおどしており,すべてのことに積極的になれない場合がみうけられる。やはり,不安・恐怖等より解放してやり,情緒の安定につながるように働きかけてやるとよい。

F 理解と豊かな愛情を注ぐ

 教師は,生徒の心情を生徒自身の立場に立って理解し,受容することによって,生徒みずからがもっている伸びようとする心を引き出すことができるものである。
何ごとにつけ,支配的・専制的な教師の態度は,生徒の意欲を低下させることになるので注意したい。

G 秩序,あるいは制限を明確にする。

 生徒を理解し,受容するからといって,より許容的になることは誤りといわなければならない。家庭において,より許容的に育てられ,衝動からの不安に対して,耐性を学ばなかった生徒は,困難に出あうと,安全な場所に逃避し,前進がみられない。これは,秩序,あるいは制限の明確さを欠いたための結果ということができる。このような生徒に対しては,初めに,ある制限のもとに課題を与え,情緒的な自己統制力や適応力が増すにつれて,次第に枠を広げていくようにすればよいのである。

 以上,学習意欲を高める方策のいくつかをのべてきたが,これは,学校教育相談における,「いつでも,だれでも,どこでも」といわれている相談的な教師の姿を追求していることにほかならないといっても過言ではない。

5.学習効果を高めるための暗示

 前節でのべたように,内的動機づけを成立するために,外的動機づけの働きが重要な役目をなしている。それは,外的動機づけが生徒の心の中に,知らず知らずに入りこんだ時,内的動機づけの要因のひとつにもなり得るからである。この,知らず知らずのうちに,抵抗なく生徒に受け入れられ,効果をあげるものとして,暗示を考えることができる。
 マスローの欲求階層を桝田 登氏は,図2のようにまとめている。
これによると,大きく,「気持ちがおちつくために」と,「やる気がおこるため」に分けて考えている。
図2
図2

(1) 暗示

 授業などにおいて,教師がさりげなく賞賛したことが,生徒にとって,やる気を起こさせたとか,教師が,生徒にとって,心の痛手となるようなことを知らないで,級友の前で,言ったことが,やる気を消滅させてしまったということをよく聞く。


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