研究紀要第38号 学習指導に関する研究 - 017/081page

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 このように,理屈や説明によらず,一定の意図を含んだ,さりげない言葉や身ぶり,その種の刺激が,ある人間に与えられ,理性による確認もなく,無批判に受け入れられ,その意図にそうようなものの見方が,引き起こされることが暗示といわれるものである。
 この暗示を,ある人から他の人に与えられる時は,他者暗示となり,自分自身にいいきかせる時は,自己暗示となるのである。

(2) 授業場面における暗示

 授業場面において,「気持ちがおちつくために」「やる気がおこるために」を,どのように取り入れたらよいかを考えたい。

@ 「気持ちがおちつくために」

 何事にもあれ,新しい課題に取組む時は不安がつきまとうものである。生徒にとって,授業の初めは,本時の学習目標や,一単位時間の見通しもたたず,不安定な気持ちになっている。そこで,気持ちを安定させるために,次のような方法を用い,心身をリラックスしてやればよい。

ア 姿勢
 やや浅めにいすにかけ,肩から下の力を抜いて,両足を肩幅ぐらいに広げ,足の裏が床にぴったりとつくようにする。そして,太ももに両手のひらをぴったりとつけ,軽く目を閉じる。

イ 呼吸法(腹式深呼吸法)
 鼻から吸って,鼻より吐き出す。
 吸気は5〜6秒,吐気は10〜15秒とし,3〜5回やればよい。なお,腹式呼吸をしながら,心の中で,吸気の時,「心が」吐気の時,「落ち着いている。」と唱えるようにするとよい。

ウ 終了手続
 全身がリラックスしているので,終了の際は,両手を強く握ってはなす動作を2回程度続いて,両腕の曲げ伸ばし動作を2回程度,そして最後に,静かに開眠する手続きを忘れないで行うことが大切である。
 この心身をリラックスさせるための暗示効果は,自律神経系のバランスをはかる(副交感神経の活動を活発にし,自然に交感神経の活動を抑制する)ことにより,緊張感より解放させるのに役立つのである。

A 「やる気がおこるために」

 いくら心身がリラックスし,緊張感より解放されても,やる気がおこらなければ,学習効果は期待できるものではない。そこで,どのような暗示(働きかけ)すればよいかをを考えてみたい。。

ア 賞賛と激励
 いやみのない賞賛は,だれでも,素直に受け入れるものである。
 例えば,数学のように,高等学校において,比較的個人差が出やすい教科などにおいて,だれもが,できるような簡単な問題を出して,時には,前の黒板でやらせ,できた時は,心から,「大変よくできた。」と上手に賞賛したり,たとえ,できなかった場合でも,つまずいたか所を指摘し,「わずかな間違いだから,君ならばきっとこの次はできるよ。がんばれ。」と励ましてやることが大切である。
 また,英語の場合,生徒の中には,英語に対するコンプレックスをもっている者もいるのでこれを除去してやることが大切である。このためには,例えば,授業終了前5分間ぐらいは,英単語のテストを行い,今まで,10問中2問しかできなかった生徒が,3問以上できるようになった場合,答案を返す時,「やればできるがんばれ。」と,必ず励ましの言葉を書いてやることがよい。
 とかく教師は,良い面を見つける努力をするよりも,悪い面を直そうとする意識が先行しやすい。この誤りを改め,小中学校の教師のような指導技術が,今後,高等学校の教師に強く要請されるところである。

イ 忘れないための暗示
 これは暗示を効果的にする手段としての,さりげない言葉の反複である。反復によって,


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