研究紀要第38号 学習指導に関する研究 - 039/081page
4 内帯と外帯の地質や地形の違いとリニアメント
@ 内帯
内帯の中国地方や美濃三河高原は花崗岩地帯だけに風化・浸食を受けやすく,地表面の起伏も小さく準平原化しており,尾根や谷から生ずる陰影のコントラストも弱く,フラットなパターンである。ただ,中央構造線に沿って北側に10q幅で分布する中生代の和泉砂岩は,硬い岩質のため浸食に耐え,讃岐山地を形成しており,陰影やリニアメントから,壮年期地形を示しているのが内帯地域で目立つ。
A 外帯
外帯は,内帯とは対照的に,陰影のコントラストも強く,中央構造線に沿うリニアメントも明瞭で,全地域が起伏に富んだ壮年期地形を示している。この,陰影やリニアメントから,変成岩や古い時代の硬い岩質から構成されていることが推測され,リニアメントの方向から,地質構造の方向が考察される。3 実体視用空中写真の教材化にあたり
衛星画像は,広い地域を対象に,スケールの大きな地質構造のような地学現象を調べるのに適している。これに対し,実体視用空中写真は,火山地形,段丘地形,扇状地形のような小スケールの現象を調べるのに適している。それは,実体視鏡を用いると,起伏が実際の数倍も誇張されるので,小さな起伏でもよく読みとれ,地形の特徴が観察しやすいからである。
実体視用空中写真は,その隣り合う写真はそれぞれ,60%ずつ重複して撮影されており,その重複部分が実体視に用いられる。
実体鏡を用いる場合,写真の同一地点が約5cm〜6cmになるように離して鏡下に置き,また,実体視したとき,山や建造物が,逆に窪んで見える場合,写真を左右置きかえて親察するとよい。(1) 簡易実体鏡の製作
1)材料
サンロイド板 200×50×3mm 1枚 サンロイド板 80×50×3mm 1枚 塩ビ管 (外径37mm)×5mm 2個 塩ビ管 (内径37mm)×3mm 2個 ナット・蝶ねじ 4mmφ15mm 2組 ルーペ(生物用)35mmφf:90mm 2個 2) 製作法
図8
仕上がりは,図8のように,蝶ねじで実体鏡の高さを調節して,レンズの焦点があわせられ,また,写真の同一地点が重なって立体視できるように左のレンズの移動調整が可能なように工夫されている。
@ サンロイド板の加工(200×50×3)
図9の斜線部を切り抜き,点線に沿って熱を加え,折り面のなす角が100°になるように曲げる。
図9 図10
A サンロイド板の加工(80×50×3)
図10のように5mm幅の溝を入れる。
B 塩ビ管の大小を図10のように2mmだけ重ねて接着する。(2) 実体鏡の用い方
@ 写真上の同一点が約5cm〜6cm離れるように写真を鏡下に並べる。
A 蝶ねじをゆるめて高さを調整し,レンズのピントを合せる。(生物用ルーペを用いると約9cm)
B もし,山や建造物が逆に窪んで見える場合は,写真を左右置きかえる。
C 見なれるまでは,写真上の同一地点に赤印をつけておく。
D 左右写真の赤印が,重なって見えるように,左のレンズを左右方向に移動させて調節する。
E つぎに,地形が一致するように,赤印を指で