研究紀要第39号 授業研究と評価 2-1-2方式の授業研究 - 013/038page
もんですから,今日も子供たちがそういう考えを持って,前に習ったたし算やひき算は筆算でやったわけだから,かけ算の場合もと,そういう方向に行ってくれるだろうと思ったし,そういう方向に考えることを教えたかったんです。そういう経験をたくさんさせると,「難しいからできねえ,やめる。」ではなくて,「難しいと思うけれども,必らず今までの既習したことで使えるものがあるはずだ」,というようになってくれるだろうと思うわけです。
そういう意図で,できるだけ既習事項に結びつけるような方法でやってみたんです。けれども,子供たちはあそこであんまり必要性を感じなかったと私自身も思っていますから,工夫しなければならなかった点だと思っています。たしかに,H先生のやり方でやれば,もっとわあっとくるなと思いますね。
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(3) 指導内容2について
司会 次に移らせて頂きます。指導内容の2,かけ算の筆算の方法を作り上げさせる,というところで,ここでは,研究主題と関連した観点,考える手がかりを与える工夫,学習の成果を自覚させる工夫の二つ,具体的な目標としまして,@筆算の形に書ける,A筆算の方法を作り上げる,が上げられています。こんなところを頭に置きまして,先生方のご意見をお聞かせいただきます。
(省 略)
I 観点のNo5のところで,52番の子供が,十の位と一の位とどちらを先にかけたらよいか,というところで,考えて考えて,なかなか答えがでなかったんです。一の位からかけた方がよい,と答えたんですけれども,どうしてだろう,というところでなかなか考えつかなかった。今日とり上げたのは,32×3で,くり上がりがなかったんですけれども,32番のA君から,くり上がりがあると困るから,という答えがでてきて,本当によい答えがでてきてよかったなあと思って,そのとき拍手を送りたい気持でした。
ここでは,本当に子供たちに考えさせるんだという先生の意図が十分わかりましたし,それに子供たちがこたえた,ということにすごく感心してしまいました。
司会 ここの大きなねらいは,考える手がかりを与える工夫というわけですが,たし算のところから手順よく進みまして,A君のところでぴたっとおさまった感じがしましたね。
N あのとき,A君が答えたのですくわれたんですが,その前の「十の位からはおかしいと思う人」といったときは,全員手を上げていたでしょう。
先生が,「なぜおかしいの」といったら,しばらく時間がかかりましたね。子供たちは,あのとき考えていたんですね。おかしい,ということはわかっていた。K わたしだったら,あそこではあせって,「これではおかしいね,こうしたらこうじゃないか。ああじゃないか」といろいろ説明してしまいますね。
ところが先生は,あそこでじっとがまんしてらしたでしょう。ここはすごく感心いたしました。N あそこは,本当にすばらしいなあとわたしも感心しました。A君の答えでね,子供たちに,ボクもそうだったんだというほっとした空気が流れて,ここも,先生がちゃんとねらっていたところだったのかと思って,とても感心しました。
司会 子供たちは,自分の頭の中で,ようく考えていた,ということになるわけですね。A君の答えがあったとき,ほんとに子供たちに,何ともいえない安心したような様子がよくうかがわれましたね。ここの観点No5では,既習事項がよく生かされて,子供たちは,自分の力で考えてまとめ上げていたように思います。ここでの考える手がかりを与える工夫は,とてもうまくいったんではないかと思います。
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(4) 指導内容3について
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G 観点No8について,34×2をやっているとき,子供たちは,先生から乗数先唱の説明を聞いて,そのときは一応なるほどと思ったんだと思いますが,ここでは「シニがハチ,サンニがロク」と上から下にかけてきているのがありましたが……。
鈴木 今日は最初ですから,これから段々に……。