研究紀要40号 事例を通した教育相談のすすめ方 - 002/025page

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○ 全人的な成熟についての援助
○ 価値観の発達についての援助
○ 技能的な熟練についての援助
○ さまざまな選択についての援助
○ 心理的な問題についての援助
○ 非行の矯正についての援助

図1

図1 専門機関と学校における教育相談の比較

 これらのことは、WHO(世界保健機構)で定義している、「健康とは、単に病気や虚弱でないということだけでなく、身体的にも精神的にも、また社会的にも、まったく申し分のない状態のことである」ことを目指しているといってもよい。つまり、子供の人格全体について援助を行い、その生活全般にわたっての適応を図ることにより、取りもなおさず、心の健康をよりよくしようとすることになるのである。

 また、これらは、教育相談の目指す3つのねらいである、@精神的健康の増進、A精神的不健康からの予防、B精神的不健康の治療のうち、@、Aの開発的・予防的な面に、より多くのかかわりあいをもつものである。

 学校における教育相談では、心理的な障害を持つ子供を治療することに焦点をあてるのではなく、開発的・予防的な面に焦点をあてながら、かつ、治療的なアプローチを行うことが望ましいと考える。

 従って、学校における教育相談の特質として考えられることは

@ 全般的なこと

○ すべてのその子供を対象とする。
○ いつでも気軽に相談ができる
○ 相談を行う場所はどこにでもある。
○ すべての教師が相談担当者である。
○ 相談の内容が広範囲にわたっている。

A 有利なこと

○ ラポートをつくりやすい。
○ 生徒理解のための便宜に恵まれている。
○ 教育の諸条件を広く活用できる。
○ 予防面に比重をおくことができる。
○ 長期にわたる指導援助が可能である。
○ 家庭や地域の協力を得やすい。

B 困難なこと

○ 時として、相談教師としての力量に限界がみられる。
○ 家庭との協力にも限界がある。
○ 同僚間における人間関係の問題がある。
○ 他の子供への影響がある。

 などをあげることができる。
 このような特質をどう生かすかは、取りもなおさず学校における教育相談の課題でもある。

 現に存在する特質を十分ふまえて、可能な方法を、可能な範囲でくふうし、学校の機能・特質を生かした教育相談の実践こそ、教師にとって必要なことではないだろうか。

 

3 子供を理解する基本的態度

 子供を理解することについて、東京都教育研究所西君子指導主事は、「教師がかけがえのない子供の存在を尊重し、子供と同じ土俵に立つ積極的な努力を続ける時、子供は自己に目を向け、成長への衝動を高め、自らの人格を再体制化していく。その過程で、主体的な問題解決や、個性能力の伸長がある」といっている。
 このことからもわかるように、教師と子供が同じ次元に立つような人間関係を基盤にして、すべての教育活動が進められていくならば、子供は教え与えられた教育から脱し、自ら求めて学ぶ学習を展開するに違いない。

(1) 権威的でなく、受容的なふれあいを

 子供が廊下を走るという問題となる行動があった時、その子供にとって走らなければならない何


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