研究紀要40号 事例を通した教育相談のすすめ方 - 003/025page

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らかの理由があったのであろうと、その理由を、子供の立場にたって理解したいものである。

 このためには、ただ単に、表面に現れてきた現象を分析し、原因を追求して、問題点を総合的に診断し、これを除去することによって、解決を目指そうとすること(診断的理解)であってはならない。表面的な現象の底流にある子供の気持ちや考え方を、ありのままに受けとめ、その過程で子供が心を開き、自分で自分の気持ちを整理し、新しい行動を生んでいくようにすること(共感的理解)でなければならない。

 この方法は、受容的であればあるほど、効果が期待できるものである。

(2) 主導権を,子供に

 対等な人間関係、強制されない自由なふんい気の中で、子供はありのままの自分を出してくれる。
それがありのままに、教師に受けとめられることによって、もっと理解されたいという欲求をもつものである。

 教師は一切の批判や評価をしないで、理解に努め、もし理解が困難な場合であっても、謙虚に尋ねていくなど、子供の立場になって、子供の気持ちや考えを受けとめていくように努めなければならない。こうした時、子供は主導権を得て、自分で考え、自分で判断し、自分で自分のあり方を決定していくのである。

 つまり、主体性を発揮して、自分で自分を指導していくという営みを続けることができるようになり、他律的な行動とは違った力強さと、責任をもった行動を展開していくのである。

(3) 共に歩む

 子供の気持ちを受け入れるには、子供の側に立ち、ありのままの姿に接しなければならない。疑問は疑問として尋ねていく謙虚さや、教師という構えを、場合によっては捨てる人間としての純粋さが要求されよう。

 このようなことが、子供への肯定的な関心となってあらわれ、子供は教師の存在を身近に覚え、安定感を抱くようになる。子供にとって、教師が共に歩んでくれることが大きな励みとなり、活動を一層活発にしていくのである。

 

4 問題をもつ子供の発見と診断

(1) 問題行動とは

 問題行動とは「子供が学業面・性格行動面・精神身体面等において、何らかの不適応を示す行動である」とおさえたい。
 ここで、不適応とは、欲求不満や葛藤に対してその処理に失敗し、生活上支障をきたした状態であると考える。

・ 問題行動の分類
 問題行動を「不適応を示す行動」の面から、その分類のしかたの一例を示すと、次頁の表1のようになろう。

(2) 不適応の起こり方

 人はいろいろな欲求をもって生活している。これらの欲求が満たされれば、心の緊張は解消し、適応した行動へとすすむ。欲求が満たされないときは、不満がつのり、心の緊張が続き、いろいろな不適応行動となって現れる。
 欲求が阻止される要因には、個人自身からくるもの、人間関係によるもの、環境によるもの等がある。
 以上の3つの要因の組み合わせにより、不適応の型は、次の4つに分類されるであろう(図2)。

図2 不適応のメカニズム

図2

〈注〉 @ 不適応発生の過程は相異なる3つの条件の組み合わせによって起こる。
    A 何が、その子にとって一番大事なのかはその場合、場合による。
    B 上図より不適応は4つの類型に分類される。

ア、A−C 型…典型的不適応型
イ、A−D 型…人間関係に基づく不適応型
ウ、B−E 型…環境に基づく不適応型
エ、B−F 型…精神病質的不適応型


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