研究紀要40号 事例を通した教育相談のすすめ方 - 005/025page

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れてくる。医師は患者を診察するとき、望診から入り、問診、触診へとすすむ。子供を理解する場合も、これと同じようなステップをふむ。すなわち、望診にあたるのが子供の観察であり、問診が面接に、触診が諸検査に相当する。従って、これら観察、面接、諸検査等を手がかりに総合的に理解し、問題行動を発見していくことが大切であろう。

表2 医師の診断と教師の子供の理解

医師(患者の診断)
教師(子供の理解)
@ 望診:まず「眼」をみる。顔色表情をみる
A 問診:どこが悪いか、どんな自覚症状なのかを問う。
B 触診:脈や体温を測る。
聴診器をあてる。レントゲンをとる。

総合診断

@ 観察:表情・態度・服装持ち物を観察する
A 面接:身体の具合、悩みなどをきく。子供に声をかける。
B 諸検査:知能検査・学力検査・性格検査など実施してみる。

総合理解

A 日常観察のめやす

 問題行動は不適応を示す行動だから、それにつながる行動傾向に、どんなものがあるかを明確にできればよい。その観察のめやすをもとに、子供の日常生活を観察していくと、子供が「見える」ようになるものである。
 次にあげるのは「観察のめやす」の一例にすぎないが、各学校で独自の「観察のめやす」を作成し、日頃の実践に活用していくことがポイントとなろう。

表3 問題行動発見の観察のめやす

(1) 怠学傾向

@ 授業中勝手なことをしている。
A 授業中騒いだり、会議や勉強の邪魔をする。
B 宿題・係仕事をしない。
C 学習にむらがあり、成績が下降する。
D 欠席・遅刻・早退が多い。

(2) 生活の乱れ

@ 物の貸し借りがひんぱんである。
A 持ち物が生徒らしくなくなる。
B カバンの中にいかがわしいものを入れている。
C 服装が派手になる。
D 教師を避けたり、反抗的態度が目立つ。

(3) 身体・精神の異常傾向

@ 神経質である。
A 不安傾向が著しい。
B 元気がない(顔色がよくない)。
C ふさぎこむ(友としゃべらない)。
D 頭痛・腹痛がしやすい。

B 面接による予測

 観察により、その問題となる行動が継続するようであれば、面接をし、本人の気持ちに触れてみることが必要になってくる。このとき「現象」面に目を向けるのでなく、「心」の面に目を向けて理解してあげることが大切である。
 面接のときは、次の点に留意したいものである。

ア 「いつでも」、「どこでも」の姿勢で、できるだけ子供と接触をはかる。
イ こちらが、心の扉を開いて、話し合えるふんい気をつくる。
ウ 子供の心の底にあるものを察知する。

C 諸検査・調査で確認を。

 観察・面接はあくまでも主観的になされる。この危険性を少しでも排除するために、客観的なデータが必要となってくる。今まで実施した諸検査・調査をもう一度検討してみると、子供を理解するのに、新しいものを発見することがあるものである。しかし、解釈にあたっては、絶対視せず、限定してみていくことであろう。

D その他、班日誌・日記・作文等で。

 生活班を導入している学級・学校においては班日誌の活用は、個人及び集団を理解する上で強力な武器となる。教師の知らない面がありありと書かれ、驚くほどの内容があることも事実である。さらに、子供と子供、子供と教師の信頼関係をうちたてていく上にも、班活動は見直されるに十分値するものであろう。
 また、日記・作文等により、子供の悩みをほりおこし、問題を早期に発見し、それが解決への糸ロヘとつながっていっていることも見逃せない。

 以上、五つの面から、問題行動の発見のしかたを見てきたが、あくまでも、教師の「観察と面接」が何にもまして大切なことである。教師が、登校時・授業・休み時間・昼食・清掃・部活動・学校行事・下校時などのあらゆる場面で、ひとりひとりの子供に目を向け、心を配ること、これが、問


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